「自治体チェックリスト」
調査報告 2015

「いじめ防止対策推進法」に基づき、各地方自治体によって作られた「いじめ防止基本方針」を、ストップいじめ!ナビが独自にチェック! その自治体のポイントランキングと、調査報告の詳細を掲載します。
(完全版・報告:NPO法人ストップいじめ!ナビ 弁護士チーム/情報公開日:2016年2月12日)

自治体チェックリストランキング表

詳細は、「5 寸評」をごらんください。

1 はじめに

いじめ防止対策推進法が施行されてから2年以上が経過しましたが、今年度も複数のいじめ自殺がニュースで取り上げられました。そのうち2015年7月に発生した岩手県の事件では、同法の周知徹底がなされていなかった上、いじめ防止対策組織も全く機能していなかったという事実が明らかになりました。

法は、小・中・高・特別支援学校に対し、「学校いじめ防止基本方針」(法13条)の策定を通して、いじめ防止のための具体的な独自の方針・計画を立てることを義務付けていますが、多くの学校が策定する同方針は、各自治体から提示された「雛形」をもとに作られているのが現状です。そして、その「雛形」は、各自治体策定の「地方いじめ防止基本方針」(法12条)の趣旨を踏まえたものになっています。

そこで、「ストップいじめ!ナビ」では、この「地方いじめ防止基本方針」がいじめ問題に直面する現場である学校のいじめ対策を大きく方向付けることに鑑み、昨年に引き続き、各自治体の同基本方針が法の趣旨に即した実効的な内容となっているかを調査・検証することとしました。そのため、法の趣旨を踏まえたチェックするリストを作成するとともに、同リストを使用して、2015年8月18日までに基本方針を公開していた人口の多い、いわゆる主要都市について、その内容を調査し評価いたしました。

なお、今回、我々の調査・検証の対象とならなかった都市についても、このチェックリストを用いれば、その自治体の基本方針がいじめ防止対策推進法の趣旨に即したものであるか否かを把握することができます。対象都市以外の自治体にお住いの方々も、ご自身のお住いの都市についてチェックしてみてはいかがでしょうか。本チェックリスト及び本調査結果により、いじめ防止対策推進法の趣旨・目的への理解が進み、子どもたちに関わる全ての大人たちが自身のいじめ問題への関わり方を考えることで、子どもたちがより楽しく健やかに学校生活を送ることができるようになれば、メンバー一同、大変嬉しく思います。

ストップいじめ!ナビ一同 作業チーム:真下麻里子、小島秀一、石垣正純、松岡佐知子、清水秀俊、櫻井光政、井桁大介、馬場大祐、今村奈央、畑福生、他18名(自治体チェックリスト班・弁護士チーム)、 須永祐慈(事務局)

2 チェックリストの改訂と2015年度版の内容について

ア 2014年度版チェックリストの改訂について 冒頭で述べました通り、法施行から2年以上が経過し、いじめに関する事件の発生が明らかとなる中で、法的観点から見た各学校のいじめ対策の問題点が日々浮き彫りになってきています。 そこで、かかる問題点を踏まえ、現時点においてより実効性が高いと考えられる「地方いじめ防止基本方針」が高く評価されるよう、昨年用いたチェックリストを改訂しました。 したがって、同じ内容の「地方いじめ防止基本方針」であっても昨年度とは順位や評価が異なっている可能性があります。この点をご承知置きいただいた上、今年度の結果をご参照いただけましたら幸いです。
イ 2015年度版のチェックリストの内容について 今年度版のチェックリストは、大きく以下の6つの重要項目により構成されています。
①「PDCAサイクル等」 ②「自治体内部の組織構成」 ③「法22条の組織」(学校内部の組織) ④「いじめ予防の体制作り」 ⑤「重大事態への対応」 ⑥「その他の考慮要素」
多くの方が簡易にチェックできるようにするために、各項目について個別に点数を算出し、合算する方式を取りました。各項目の中でも、より重要度の高いものについては、あらかじめ高い点数が振られていますが、さらに高く評価すべき素晴らしい内容については、⑥「その他の考慮要素」において加点しました。

3 自治体いじめ防止基本方針 チェックリスト

《1》PDCAサイクルの仕組み等
1  理念・方針・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
理念・方針【理念が記載されているか】・自治体の特性を踏まえた具体的な内容……〇・胸を打つもの……〇・単に法律等を引き写しただけのもの……△※複数の〇があるなど、とりわけ評価すべき場合……◎
(関連する法律など・以下同=法6条、法12条)

2 自治体の年間計画・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【年間計画が記載されているか】・日にちや実施内容等が記載された具体的なもの……〇・項目のみ……△
(法12条)

3 予算措置・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【いじめ対策に、特別の予算措置を講じているか】・増額や増員を、前年と比較して具体的に明記している……○・増額や増員を目指す旨抽象的に記載するのみ……△
(法10条)

4 人員措置・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【いじめ対策のために、具体的な人員措置を講じているか】・いじめ対策のために現場の人員を補充している……〇・外部の専門家を確保している……〇・人員措置を講じる旨抽象的に記載……△
(法18条)

5 アンケート・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
【自治体主導の定期的なアンケートを実施しているか】・アンケート項目や分析結果を公表している……〇・自治体に報告されたいじめの存在・件数等を積極的に公開している……〇・実施することを抽象的に記載……△
(法16条1項)

6 調査・研究・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0【いじめに関する調査・研究を実施しているか】・調査・研究の内容が具体的に記載されている(例:「いじめの実態に関する統計学的な調査」・「いじめが児童等の心身に及ぼす影響に関する研究」)……〇・実施することを抽象的に記載……△
(法16条1項、法20条)

7 見直し・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
【基本方針を見直すことを予定しているか】・見直しのための日程が確保されている……〇・見直しに当たり、学者、弁護士、医師、福祉・心理の専門家、NPO等外部の専門家の意見を取り入れる旨明記している……〇・アンケートや調査・研究と見直しが関連付けられている……〇・見直しに当たり、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、PTA団体、児童・生徒の団体、教職員団体等、関連する専門家・団体の意見を取り入れる旨明記している……〇・行政内部の見直すことを抽象的に記載……△※複数の〇があるなど、とりわけ評価すべき場合……◎


《2》自治体内部の組織構成
1 設置・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【教育委員会内のいじめ問題対策連絡協議会(14条1項)とは別に、いじめ防止等の対策を実効的に行うための付属機関】
常設している……〇 常設していないが設置している……△
(法14条3項)

2 構成・・・・・・点数 〇=5 △=3 ×=0
【自治体内部に構成する何らかの組織(重大事態に対する組織は除く)のメンバーに外部者を入れているか】・NPOメンバー、弁護士、医師等完全に外部の有識者を組織に入れている……〇・警察、民生委員等、公職に就く外部者を組織に入れている……△
(法14条3項、衆附三項、参附六項)


《3》法22条の組織(学校内部の組織)
1 内部職員の構成・・・・・・点数 〇=5 △=3 ×=0
【組織のメンバーにいじめ防止を実行的に行える内部職員を入れているか】・学級担任,教科担任等の学校現場に携わる者を必ず組織に入れ、数年で全ての教職員が一度は関与するようにしている……○・学級担任・教科担任等の内部職員を組織に入れることを求めるのみ……△・いじめを専門に扱う一部の教職員のみで構成している……×
(法22条)

2 外部者の参入・・・・・・点数 〇=5 △=3 ×=0
【組織のメンバーに外部者を入れることを勧めているか】・PTA、NPOメンバー、地域住民の代表、弁護士、医師等、完全に外部の有識者を組織に積極的に参画することを義務付けている……〇・スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等、日常的に学校の内部で活動する外部者を組織に入れることのみを義務付けている……△・外部者を入れることを勧めるのみで、義務付けていない……×
(法22条)

3 役割・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【いじめに関する全ての情報を集約させることを勧めているか】・自己が担当する生徒かを問わず,いじめの情報及びいじめの疑いに関する全ての情報について,組織に報告するよう促している……〇・組織がいじめ対策の中枢であることを抽象的に宣言するのみ……△
(法22条)


《4》いじめ予防の体制づくり
1 早期発見・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【いじめを早期に発見するための具体的な手段を設けているか】・早期発見のためのチェックリスト案を公表している……〇・早期発見のためのアンケート案を公表している……〇・早期発見を重視する旨抽象的に記載するのみ……△
(法16条1項)

2 窓口の設置・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【児童等が直接相談・通報できる窓口を公開しているか】・窓口の担当者、連絡先等が具体的に記載されている……〇・窓口がある旨抽象的に記載するのみ……△
(法16条2項)

3 啓発活動・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
【いじめに関する啓発活動(インターネットに関するものを含む)を実施しているか】・いじめ啓発週間に合わせた具体的な啓発活動が明記されている……〇・外部の専門家による定期的な啓発活動を実施している……〇・実施することを抽象的に記載……△※複数の〇があるなど、とりわけ評価すべき場合……◎
(法15条2項、法19条1項、法20条、法21条)

4 指導方針・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
【道徳教育(いじめ授業等)、人権教育、体験学習等、いじめの予防に資するカリキュラムを紹介しているか】・カリキュラムの内容や時期が具体的……〇・学校が求める場合に外部者をあっせんする仕組みを設けている……〇・いじめ予防に資するカリキュラムを設ける旨抽象的に記載するのみ……△※複数の〇があるなど、とりわけ評価すべき場合……◎
(法15条1項)

5 自主的活動に対する支援・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
【児童の自主的活動に対する支援を明記しているか】・自主的活動の例示が豊富……〇・支援の内容が具体的(講師の派遣、予算措置等)……〇・支援をする旨抽象的に記載するのみ……△※複数の〇があるなど、とりわけ評価すべき場合……◎
(法15条2項)

6 学校の年間計画の具体例・・・・・・点数 ◎=7 〇=5 △=3 ×=0
【学校の年間計画の具体例を記載しているか】・学校が基本方針を策定する際に参考になる年間計画の具体例が記載されている……〇・いじめの予防教育を科目横断的かつ学校教育活動全体を考慮して年間計画を策定するよう求めている……〇・年間計画を策定する必要があることを明記するのみ……△
(法13条、高崎市教育委員会「学校におけるいじめ防止プログラム」参照)

7 学校のいじめ防止基本方針・・・・・・点数 〇=5 △=3 ×=0
【学校のいじめ防止基本方針の策定に当たり、児童、保護者、地域住民等の意見を取り入れる仕組みを設けているか】・意見を取り入れる仕組みとして、外部の専門家と協力していじめ防止基本方針を策定する仕組みを推奨する等、内容が具体的に明記されている……〇・意見を取り入れることを推進する旨抽象的に記載するのみ……△
(法13条、15条2項、参附三項参照)

8 情報の共有・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【いじめの教員間での共有、保護者との共有が明記されているか】・情報共有のための具体的な方針や手段を明記している……〇・情報を共有する旨を抽象的に記載するのみ……△
(法23条)

9 学校評価・・・・・・点数 ◎=5 〇=3 △=1 ×=0
【学校が隠蔽を防止し、適切な対策を採るための評価基準としているか】・いじめの存在を学校評価においてマイナスに評価しない旨明記している……〇・いじめの防止等の制度の構築や、いじめの対策を適切に行っていない場合には,いじめの発生の有無にかかわらず否定的評価が加えられることを明記している……〇・隠ぺいを防止する旨を抽象的に記載するのみ……△※複数の〇があるなど、とりわけ評価すべき場合……◎
(法34条)


《5》重大事態への対応
1 組織・・・・・・点数 〇=5 △=3 ×=0
【重大事態に対応する組織について、第三者委員会制度としているか】・外部の専門家を入れることを明記し、専門性、公平性・中立性を重視している……〇・第三者委員会制度とする旨抽象的に明記するのみ……△・自治体内部の組織を母体としている……×
(法28条基本28頁以下)

2 予算・・・・・・点数 〇=2 ×=0
【組織の予算を確保しているか】・重大事態に対応するための予算を具体的に確保している……〇
(法28条)

3 情報の取扱い・・・・・・点数 〇=3 △=1 ×=0
【重大事態に関する情報の取扱いについて留意しているか】・情報の取扱いに関し、WHOの自殺報道ガイドラインを参考にする等、既存の知見を踏まえ、具体的にガイドラインを策定している……〇・取り扱いに留意する旨抽象的に記載するのみ……△
(基本30頁)


《6》その他の考慮要素
1 その他・・・・・・点数 0〜8
【その他の考慮要素】⇒地方の実情に応じている、イラストやグラフを用いるなど分かりやすさの観点から工夫されている、児童に寄り添っていることが伝わる、加害児童に対する教育的配慮も重視している、ネットいじめについて詳細な記載がある、多数の関係機関が一丸となって対策に取り組む旨明記している、学校の基本方針のひな形を公開している等、いじめ対策に真摯に取り組んでいることが分かる記載がある場合には、裁量で点数を加点する。
(法14条)


すべての項目を満点とした場合の合計点=107点

4 調査の方法及び対象

(1)方法
チェックリストを使用して、複数のチームにより、各自治体をそれぞれ3回チェックしました。原則として、3回のチェックの平均により算出したものが、今回の各自治体の評価になっています。

(2)対象
前述の通り、2015年8月18日までに基本方針を公開していた人口の多い、いわゆる「主要都市」(おおむね人口50万人以上)を対象としました。 なお、同時点において、対象とした都市のうち千葉市・札幌市は作成中、船橋市は作成検討中、東大阪市は作成済みではあるものの、ホームページには非掲載とのことでした。
確かに、地方いじめ防止基本方針の策定は、各自治体の努力義務であり、策定・公開が義務付けられているものではありません(法12条)。 しかしながら、いじめ問題は、言うまでもなく、子どもの尊厳・生命に関わる重大な問題です。子どもに関わる全ての大人たちが各自治体のいじめに対する取組を検証し、建設的な議論を行うことができるようにするためにも、基本方針を策定・公開していない自治体については、速やかに策定し、公開することが望まれます。

5 寸評

(1)総評
各自治体が策定し公表する基本方針を確認してみると、それぞれ随分といじめに対する姿勢や取組が異なることがわかりました。以下に、上位自治体と下位自治体のそれぞれの特徴など、この調査を通して弁護士チームが感じたことを総評として記載します。

ア 基本方針の分量について
そもそも、基本方針を策定・公開していない自治体があったことは前述(3 調査の方法及び対象)の通りですが、策定されていたとしても、分量が極めて少ない自治体もありました。 もちろん、分量が多ければ直ちに素晴らしいということにはなりませんが、高評価であった多くの自治体は、分量が多い傾向にありました。いじめ問題に対し、真剣に取り組んでいるからこそ、自治体から発信したいメッセージが多くなり、その分、分量もとい熱量が増えるのだと感じました。

イ 基本方針の内容について
上位自治体は、総じて、独自の取組などが極めて具体的に例示・記載されていました。多くの自治体が抽象的な記載にとどまる中、対策を実施すべき「いじめ」とはそもそもどのようなものなのかを考え、早期発見のために現場における共通認識を形成しようとするもの、具体的な時期を特定した上で、いじめ予防週間などを設けて子どもの自発的な取組を促すもの、外部講師を招いた教職員研修を定期的に行おうとするもの、いじめ防止対策推進法だけではなく、子どもの権利条約などを参照して、多角的に子どもにとっての最善の利益を熟考するものなど、より実効的ないじめ対策を行おうという強い意気込みや真摯な姿勢が文面から伝わってきました。
他方、下位自治体においては、文部科学省や都道府県が作成した「基本方針」の文面をそのまま転載するのみにとどまったり、具体的な記述や独自の取組についてほとんど書かれていないなど、どのような問題意識をもっていじめ問題に取り組もうとしているのか文面からは伝わってこないものが多い傾向にありました。

ウ 「学校におけるいじめ防止等の対策のための組織」(法22条)の理解について
この調査を通して、多くの自治体においてその趣旨があまり理解されていないと感じたのは、法22条に定める「学校におけるいじめ防止等の対策のための組織」の在り方です。
法22条は、学校内部に、いじめ対策の中枢となる組織を設置し、校長や学年主任など生徒指導の中心となる教職員だけではなく、担任などの一般の教職員や外部の有識者を参画させることを求めています。これは、一定の年数内に全ての教員が一度は参画することによって同僚性、問題意識の共有化を確保するとともに、情報を速やかに集約させ、さらに学校内外の風通しを良くする体制を整え、担任一人の「抱え込み」を防止し、組織的にいじめ問題に対処するための措置です。
これまで、いじめにより、多くの痛ましい事件が発生してきましたが、最悪の事態を避けられなかった原因の一つにこの担任一人の「抱え込み」による対策の遅れがあります。その反省を踏まえ、新法下においては、いじめは担任だけが対応すべきものでは決してなく、学校全体で、あるいは学校の外の専門家をも用いて対応すべきものとなったのです。
しかし、多くの自治体では、校長や学年主任をはじめとする従前の生徒指導担当者などをそのまま組織のメンバーとしています。また、いじめに関する教職員間での情報共有についても、その重要性に比して、曖昧な記載にとどまっている、または記載すらない自治体が多くありました。これでは、法施行前と何ら変わりがなく、法の趣旨が教育現場にいきわたっているとはいえません。

そのため、本調査においては、「学校におけるいじめ防止等の対策のための組織」の在り方について、一定の理解があると考えられる自治体については、相応に高く評価しています。


(2)各自治体・寸評

各寸評では、主として、特に重要と考える10項目(①理念・方針、②14条3項組織の有無、③自主活動支援、④啓発、⑤窓口、⑥学校評価、⑦22条組織、⑧情報共有、⑨28条組織、⑩見直し)についてコメントしています。チェックリストの項目は、上記10項目以外にもあり、当該自治体の基本方針の全てに言及したものではありませんが、皆さんの理解の一助となれば幸いです。



(寸評)
■1位 鹿児島市 77ポイント
○全体評価  非常に読みやすく、読み手を意識して作成されていると感じました。また、網羅的、かつ、具体性に富んだ基本方針の記載からは、これまで鹿児島市がいじめ防止に熱心に取り組んできたこと、そして、今後も意欲的に取り組んでいくとの姿勢を感じました。他の自治体にも参考にしていただきたい素晴らしい内容だと思います。
○理念・方針について  いじめの定義について、いじめの認知からその判断方法、態様の具体例等が詳細に記載されているなど、鹿児島市が意欲的に取り組む姿勢が感じられます。もっとも、他の項目の内容と比べれば、少し淡白な記載にも感じられました。関係者へ熱意を伝える重要な部分であり、自治体による強い決意を明らかにすることが望まれます。
○自治体内部の組織構成について  法14条3項に基づく組織として「いじめ対策検討委員会」が予定されていると思われるところ、その構成員は自治体職員のみであり、第三者の参加が予定されていない点はやや問題です。一方、法14条1項の組織「鹿児島県青少年問題協議会」の構成について、学識経験者だけでなく、公募に応じた者なども明記されている点は同市の素晴らしい特色といえます。ただし、同協議会の活動内容は、抽象的な記載にとどまっており、運用によって実効性が大きく変わってしまう可能性があるので、今後の改訂により、より具体的な記載がなされることが期待されます。
○児童生徒への啓発活動について 心の教育の実施、「いじめ防止啓発強調月間(ニコニコ月間)」の実施、毎年のいじめ防止等に関するリーフレットの作成等の特色あるいじめ防止対策を講じるなど、独自の具体的な取組についての記載がある点は、高く評価できます。
○窓口の設置について  「市教育相談室等の電話番号を記載した教育相談カード(いじめ相談窓口~心のダイヤル~)を小・中学生全員に配布」するなど、学校以外の相談窓口を積極的に周知することが明記されており、高く評価できます。
○自治体による学校評価について 「より早く発見し、より早く解決できたか」等を「重視」することを明確にしている点、「いじめの取組に関する評価は学校基本方針に位置づけられたPDCAサイクルに基づき行う」としている点等、各校が積極的に開示していくインセンティブを与える方向で規定がなされていることは高く評価されます。
○学校内部の組織について 「いじめの防止等の対策のための組織の構成員」の役割が具体的に記載されている点は評価できます。 構成員については、学級担任や部活動顧問の他、「関係の深い教職員を追加」することなども例示的に挙げている点は評価できますが、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足している点はやや残念といえます。 外部専門家については、助言を得るなどの活用例が記載されているのみで、外部者の参加を義務付ける規定がありませんので、今後の改訂により規定されることが望まれます。
○教職員間の情報共有について  いじめ防止等において、組織で対応することの重要性、情報共有の重要性が明確に示されており、この点は評価できると思いますが、抽象的な記載となっており、実際には各校の裁量が大きいと考えられる点が少し懸念されます。
○重大事態への対応に関する組織の構成について 「児童生徒に関する事故等調査委員会」について、「弁護士等の法律関係者、医療関係者、学識経験者、共育関係者、その他教育委員会が認めるもの」となっており、第三者の専門家で構成されることが明確に規定されている点で評価できます。



■2位 仙台市 64ポイント
○全体評価  網羅的で丁寧な記載がなされており、かつ、具体的な施策も多く示されています。いじめ防止や早期発見のための「具体的取組例」が記載されていることも仙台市の基本方針の素晴らしい特色です。全体として、仙台市がいじめ防止対策に意欲的に取り組む姿勢がうかがえ、高い評価を受ける基本方針と感じました。
○理念・方針について  関係者全員で「いじめ」の抑止に取り組もうとする姿勢、及び、「いじめ」抑止に必要な視点が記載されており、その姿勢の強さが示されています。 また、「いじめ」の具体例について、いじめへと発展しやすい「いじり」の具体例も記載されており、いじめ予防に対する意識の高さがうかがわれます。
○自治体内部の組織の設置・構成員について  法14条3項に基づく常設の組織「仙台市いじめ問題専門委員会」の構成員として、「教育、法律、医療、心理、福祉等についての専門的な知識及び経験を有する者(弁護士、精神科医など)で構成することを基本とする」と第三者性の高い外部者を含めることを明示している点は、特筆すべき重要な点だと思います。
○児童生徒の自主的活動に対する支援について 「児童会、生徒回答によるいじめ防止に向けた自主的取組を促進するため、毎年11月を『いじめゼロ・キャンペーン』月間」として、学校と連携して、支援に取り組む姿勢がみられます。ただ、その具体的な内容は明らかではないため、実効性については、各学校の運用に依存する可能性があります。各学校の姿勢を尊重する姿勢は大切ですが、今後の改訂により、基本的な方向性だけでも示されることが望まれます。
○児童生徒への啓発活動について 具体的な取組、教材等が示されつつ、児童生徒への啓発活動の重要性がはっきりと示されており、仙台市の意欲的に取り組もうとする姿勢がうかがわれます。
○窓口の設置について  全体として関係各機関と連携していく姿勢はみてとれ、各校の「学校いじめ防止等対策委員会」がいじめの相談・通報の窓口ともされていますが、さらに、学校とは別組織の多種多様な相談窓口等を設置、記載した方がより望ましいと感じます。
○自治体による学校評価について 「いじめの有無や多寡のみによって学校や教職員を評価するのではなく」「取組や対応を評価」との視点が示されていることで一般的な基準は満たされていますが、さらに、いじめの実態を学校が積極的に開示していこうとのインセンティブを与える仕組み、姿勢について記載があればより良い内容になると思います。
○学校内部の組織について 「学校いじめ防止等対策委員会」の役割が具体的に記載されている点は評価できます。 構成員の具体的記載をみると、特別支援教育コーディネーターやさわやか相談員等も挙げられている点、「内容・案件により、他の必要な教職員や学校関係者等の出席も可とする」としている点は評価できますが、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加を義務付ける規定がないことは残念です。
○教職員間の情報共有について  いじめ防止等については組織的な対応が重要である点、各教員が抱え込まないようにするとの点が明記されている点で高く評価できますが、やや抽象的な記載にとどまっており、実際に教職員間で密な情報共有ができるかは、各学校の運用に依存すると思われ、この点、少し残念です。
○重大事態への対応に関する組織の構成について 調査組織について、学校が主体となって調査を行う場合にも「学校評議員、PTA役員、学校医など学校以外の委員を加えるなど公平性・中立性の確保に努めた構成」としている点、及び、学校が主体となって調査を行う場合以外の事案においては、14条3項に規定する弁護士、精神科医などを始めとする第三者性のある「仙台市いじめ問題専門員会」を調査組織としている点で評価できます。
○基本方針の見直しについて 毎年度の取組実施結果の点検・評価、仙台市いじめ問題専門委員会の意見を踏まえ、十分な検討を行い、必要な措置を講じるとしている点は、やや抽象的であるものの、他の自治体と比較して、具体的に見直しを検討する姿勢がうかがわれます。



■3位 川崎市 57ポイント
○全体評価 いじめの現状認識が具体的かつ最新であり、対応についても具体的に記載され、さらに、「児童支援コーディネーター専任化の推進」等、他の自治体にはない独自の取組も紹介されています。全体として、他の自治体に比べて記載が具体的であり、いじめ防止等に関する意識の高さと強い意志がうかがわれます。
○理念・方針について いじめ防止等において重要な8項目を端的に列挙しつつ、「いじめられる側にも原因があるとか、成長の糧になるなどの考え方を一掃し」、「過度な同質志向を排除」、「様々な情報を積極的に保護者と共有し、家庭との協力体制を築く必要」等を明確に記載しており、旧弊を改めようとする強い意志が感じられます。 また、「いじめ」の具体例について、いじめへと発展しやすい「いじり」の具体例も記載されており、いじめ予防に対する意識の高さがうかがわれます。
○自治体内部の組織構成について 法14条3項の「川崎市いじめ問題専門・調査委員会」については、役割が明確になっておらず、また、構成員についても「いじめ事案の関係者と直接の人間関係または特別な利害関係を有しない者」とされているのみで、外部性が担保されているとは評価できません。実際に選出された委員をみると、外部性が担保されていると評価できると思いますが、その重要性に鑑みれば、運用に任せず基本方針でも明確に記載されるのが望ましいと感じます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援について 「児童生徒自身の『自浄力』を身につけさせる」等の記載もあり意識はされていると感じますが、いずれも抽象的な記載にとどまっている点が残念です。
○児童生徒への啓発活動について  「かわさき共生・共育プログラム」の6時間の実施が明記されるなど、実施内容が具体的に記載されている点で評価できます。
○窓口の設置について 通報・相談機関が他の自治体に比べて突出して多く挙げられている点、法務局等ではなく、市教育委員会独自のものを多く設けている点など、自治体全体でいじめ問題に真摯に取り組もうとする姿勢が見て取れます。
○自治体による学校評価について  学校評価において、「いじめの事実が隠蔽されず、いじめの実態の把握及びいじめに対する措置が適切に行われる」視点が重要であり、早期発見、再発防止の取組等に関して適正に評価されるべきと明記されている点は、他の自治体と比較して良い点だと感じます。
○学校内部の組織について 「校内いじめ防止対策会議」の役割が具体的に記載されている点は評価できます。 構成員の具体的記載をみると、児童支援コーディネーターや部活動顧問責任者等も挙げられている点は評価できますが、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加を義務付ける規定がないことは非常に残念です。
○教職員間の情報共有について やや抽象的な記載ではありますが、「教職員は、いじめの兆候や懸念、児童生徒からの訴えを、一人で抱え込むことなく、管理職や学年職員に相談し、『対策会議』に報告する。」との記載があり、組織(チーム)で対応することが重視されている点は評価できます。
○重大事態への対応に関する組織の構成について 「重大事態の意味」、「調査の実施」については一定の具体性をもった記載がなされていますが、最も重要な構成員については、「自治体内部の組織構成について」の項で述べたのと同様に、具体的に明記されておらず、記載上、外部性に関し問題があると言わざるをえません。この点は、今後の改訂により改善されることが望まれます。



■同率4位 北九州市 55ポイント
○全体評価  いじめの未然防止と早期発見を柱として、具体的かつ詳細な内容となっており、いじめ防止に向けた強い決意がうかがわれる内容です。また、「北九州対人スキルアッププログラム」の活用や、市内郵便局と連携した「こどもの見守り活動(ポスト・パトロール・ネットワーク)」などと、独自の取組が示されており、この点も高く評価できる内容となっています。
○理念・方針について  理念として、「いじめは絶対に許されない」「どの学校でも、どの子にも起こりうる」「いじめられている子を最後まで守り抜く」という3本の柱を定立し、未然防止や早期発見に重点を置いた内容となっています。またいじめの定義や影響などについて、その内容を詳細に記載しており、いじめという現象に対する深い理解に基づいた内容だといえます。
○自治体内部の組織の設置・構成員について 法14条3項に基づき編成される「北九州市いじめ問題専門委員会」は、弁護士、医師、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有する者、その他教育委員会が適当と認める者で構成することを基本としており、外部の有識者を入れることを強く意識した内容となっている点は、高く評価されます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援について 児童の自主的な活動に対する積極的支援については明示的記載がなく、今後の改訂において、この点に関する検討が必要と思われます。
○児童生徒への啓発活動について  いじめの未然防止のための「いじめ撲滅強化月間」や、「24時間こども相談ホットライン」の周知徹底など、具体的な施策を伴った内容となっており、啓発活動の実効性が大いに期待でき、高く評価できる内容となっています。
○窓口の設置について  上述の「24時間こども相談ホットライン」の存在や、スクールソーシャルワーカーを派遣するなど、具体的な相談窓口が明記されており、北九州市がいじめ対策に非常に真摯に取り組んでいることがうかがえます。
○自治体による学校評価について 指針には、「いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、いじめの問題に対して学校が、問題を隠さず、その実態把握や対応にどのように取り組みを行っているかについて評価する」と、国の基本方針と同様に、いじめの隠蔽防止につながる評価姿勢は一定程度打ち出しています。ただ、いじめの認知・報告を真に促すには、前者「いじめの有無やその多寡」の評価対象としてのウエイトをより下げる必要があります。今後、その点を意識した具体的な記載が規定されることが望まれます。
○学校内部の組織について 北九州市では、本法成立の以前から、「校内いじめ問題対策委員会」を設置しており、全国に先んじて対策を行ってきた点は評価できます。ただし、その委員については、学校の実情に応じて校長の判断に委ねるとしており、第三者性が確保できていません。今後の改訂では、一律に外部者を入れる組織体制とすることが望まれます。
○教職員間の情報共有について いじめ早期対応のために教職員研修を充実するなどの方針が打ち出されており、その中で情報共有についての指導があるとは思われますが、明示的な記載が望まれるところです。
○重大事態への対応に関する組織の構成について 重大事態に対応する組織は、14条3項組織と同じ、教育委員会の設置する「いじめのない学校作り推進委員会」とすると条例上定められています。第三者性・透明性を持ち、かつ専門家を確保した右委員会を対応組織とした点は、法の趣旨に合致するものであり、高く評価されます。
○基本方針の見直しについて 見直しを行うことは掲げられていますが、時期や意見の集約方法など具体的な方法についての言及があればより良いと思います。



■同率4位 神戸市 55ポイント
○全体評価  全体的には、いじめ防止対策が進められるよう総合的に書かれていた点は大いに評価できます。ただ、それぞれの役割についてはやや抽象的な記載にとどまる部分も見られます。具体的な組織の活用方法など、今後の担当部署や現場サイドでの積極的な実態把握、取組や効果検証などが促進されるよう、今後市民などが検証することなどを期待します。
○理念・方針  神戸市は、まず教育について「人は人によって人になる」という理念で、また「神戸市いじめ指導三原則『するを許さず されるを責めず 第三者なし』を核とした指導を継続展開」していく旨が書かれていて、これまで行われてきた市の取組を意識したものとなっています。また、いじめの定義や教職員に関するもの、防止、対処、早期発見、家庭・地域・関係機関の連携などの取組を総合的に進めていこうとする点については評価できます。
今後、これまでの取組だけでなく、新たな工夫を凝らそうという意識がより明確になると、さらに高い評価を受けるのではないかと考えます。
○自治体内部の組織構成  教育委員会が設置するいじめ対策連絡協議会については、 その設置が明確に示されています。またその機関の構成員として「弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有する者」、そして調査への公正性・中立性を確保することが明記されていることは評価できます。
○学校内部の組織  学校内部の組織については、複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者、その他の関係者により構成すると書かれるにとどまっており、組織内にいる者の関わり方や外部者がどの程度参加できるかについては明記されていません。外部の専門家が参加して積極的にいじめ防止を進めることができる組織作りのための具体的な手段の明記が求められます。
○窓口の設置 いじめに関する通報や相談を受け付ける体制については、児童生徒・保護者の相談を受け付ける「こうべっ子悩み相談「いじめ(ネットいじめ)・体罰ホットライン」(24時間いじめ相談ダイヤル)」等の具体例が記載されている点で評価できます。そのほか関係機関の相談室、スクールカウンセラーの配置による体制の充実、学校サポートチームの常設など、相談を受け入れる体制について、環境整備、取組推進を促している点が評価できます。
○啓発活動  いじめ防止への啓発活動については、「ホームページ、ポスター、チラシ、周知カード等を通じて広報」と抽象的には書かれているものの、独自の運動や具体的な内容は明記されていません。具体的な啓発活動の記載が求められます。
○自主的活動に対する支援  児童の自主的な取組については、「学級活動や児童(生徒)会活動の中で、いじめの防止等のために自主的に行う活動を支援する」という抽象的な言葉にとどまり、支援の具体的な内容には触れられていない点が残念です。
○情報共有  情報共有については、 職員会、研修、職員朝集の場を活用し、当該児童生徒に係る情報を全職員で共有する機会を設ける旨が書かれていますが、あまり強調はされておらず、どのくらいの情報共有を行うのかについては明確さに欠けます。いじめが起こった際の、担任以外との教職員の情報共有は、極めて重要ですので、より積極的な姿勢が求められます。
○学校評価  学校の評価については「いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、日頃からの生徒の理解、未然防止や早期発見、いじめが発生した際の問題を隠さず、迅速かつ適切な対応、組織的な取組等を評価するよう必要な指導・助言を行う。」と、国の基本方針と同様に、いじめの隠蔽防止につながる評価姿勢は一定程度打ち出しています。ただ、いじめの認知・報告を真に促すには、前者「いじめの有無やその多寡」の評価対象としてのウエイトをより下げる必要があります。その点をもう少し意識した記載があればさらに良い内容となると思われます。
○重大事態への対応  重大事態への対応については、外部の専門家などの参加が明記され、「いじめ事案の関係者と直接の人間関係や特別の利害関係を有する者ではない者(第三者)について、外部の専門機関 からの推薦等により参加を図」るとあり、公平性・中立性についても明記されている点で評価できます。 また、第三者に「弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等」が挙げられている点は評価できます。
○見直し  方針の見直しについては、3年後をめどに見直すことが明記されています。ただ、どのように見直すのかについては具体的ではなく、第三者の意見がどのくらい反映されるかは未知数です。第三者の客観的な意見を取り入れ、基本方針がよりいじめ防止へ促進されるよう取組の充実が図られることを期待します。



■6位 堺市 53ポイント
○全体評価  全体的には、それぞれの役割について丁寧な記述が見られ、また、具体的な体制づくりのために施策が書かれており、好感が持てます。いじめ防止対策推進法やそれに付随する文科省のいじめ基本方針の意図を踏まえて書かれており、積極的にいじめ防止についての取組を進めていこうと感じられる点が評価できます。ただ、対策委員会などへの第三者の参画についてや啓発活動についてはやや抽象的な点もあり、積極的かつ具体的な取組の記載が求められます。
○理念・方針  堺市の理念や方針については、平成20年に「堺市子ども青少年の育成に関する条例」が制定されており、その条例に基づいていじめ問題の解決にも取り組んできたと書かれています。その上で、現状についての人権侵害や自尊感情、自己肯定感が持てない現状についても指摘しており、今後のいじめ防止対策に対して積極的な姿勢を見せようという意識が感じられます。
○自治体内部の組織構成  法14条3項に基づき教育委員会が設置する「横浜市いじめ問題専門委員会」の構成員について、「弁護士や心理、福祉の専門家」などを含み構成すると明記されている点は第三者性を確保する点において、評価できます。
○学校内部の組織  法22条に基づいた学校が設置する「いじめ防止等対策委員会」については、「校長・教頭・首席・指導教諭・養護教諭をはじめ、校長が指名する教職員」で構成するとなっていて、現場の教職員を参画させる余地がある点については一定程度評価できます。また内容・案件によりスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの専門家について検討するとなっている点も評価はできますが、検討事項と述べるにとどまり、外部者の参加者を義務づけていないところは、改善の余地があります。
○窓口の設置  法22条に基づき学校が設置する「いじめ防止対策委員会」が、相談・通報の窓口としての役割を担うことが書かれています。また「いじめの早期発見」の項で、24時間電話相談「こころホーン」などの相談体制が紹介されていますが、より具体的な窓口等の明記が望まれます。
○啓発活動  いじめ防止への啓発活動については、「教育委員会の相談窓口、それ以外の相談機関の連絡先を記載したカードやチラシの配布、ホームページへの掲載等」と書かれているにとどまっているものの、子どもに対する取組や外部との連携によって、啓発への意識は感じられます。
○自主的活動に対する支援  児童の自主的な取組については、独自の項目は設けられていませんが、児童会や生徒会等によるいじめの防止に向けた自主的取組を推進する旨の表記はあり、支援する姿勢は読み取ることができる点においては評価できます。
○情報共有  情報共有については、 学校対策委員会の中で、的確にいじめの疑いに関する情報を共有することが書かれています。また、教職員に対してもささいな兆候や懸念、児童生徒からの訴えを抱え込まずに全て学校対策委員会に報告・相談するとも明記されており、情報共有や連携についての積極性が感じられる点で評価できます。
○学校評価  学校や教職員の評価について、「教育委員会は、いじめの有無や多寡の有無によって学校や教職員を評価するのではなく、問題を隠さず、…目標を立てて取り組んでいるか、いじめが発生した場合は教職員が連携して組織的に解決にあたっているか」などを評価すると書かれており、評価方法を一定程度具体的に書いている点が評価できます。
○重大事態への対応  弁護士や心理、福祉等の適切な専門家を加えた組織の上で調査することが記載されている点、自殺の背景調査の留意事項のほか、情報発信報道対応について、WHOのガイドラインを参考にするよう書かれている点等、法の趣旨と合致するものと評価できます。
○見直し  いじめ防止基本方針の見直しについて明記されていません。いじめ防止対策推進法が、学校内の取組において「PDCA」サイクルでの検証を促している以上、今後の改訂により、見直しが明記されることが望まれます。



■7位 京都市 48ポイント
○全体評価  基本理念の充実、窓口の整備、独自の活動を行ってきたこと等、高く評価できる部分がある一方で、法14条3項に基づく組織の設置が明記されていないことや、学校内部の組織の構成員が不明確であること、基本方針(取組指針)の見直し規定がないこと等、改善が必要な部分も目立ちます。法律が求める体制の整備を明記することが、今後の課題と思われます。
○理念・方針について  いじめの態様について具体的に想定した上で、いじめ防止のために取り組む決意を表明しているだけではなく、いじめ予防に向けた子どもの主体的な行動を目指すことや、当事者である子どもの保護者に対する支援も明記しており、高く評価できます。
○自治体内部の組織構成について  法14条3項に基づく組織が設置されておらず、今後の課題です。
○児童生徒の自主的活動に対する支援について  平成18年度に「いじめに立ち向かう生徒会議」を実施した等の経緯を踏まえ、全市の中学校生徒会議や中学校生徒会サミットを実施し、中学生相互や中学生と大人との協議を重ねる中でいじめについても協議するとの具体的な記載があり、評価できます。
○啓発活動について  全ての児童生徒に対し、道徳教育や人権意識を高める取組等を行うことが明記されており、一定の評価はできます。
○窓口の設置について  「安心して相談を行うことができる体制の整備」を行うこととし、取組指針の別紙にて具体的な相談先名称、連絡先、相談可能な日時等が記載されており、実際に窓口にアクセスすることができるように整備されている点を高く評価できます。また、同様の窓口を設置している各機関、団体と連携して必要な情報の共有を図ることを明記している点も評価できます。
○自治体による学校評価について  規定はありません。
○学校内部の組織について  全校に常設されているいじめ対策委員会を法第22条の組織と位置付ける旨明記されていますが、担任や部活の顧問が当該委員会に参加できるかどうかについては明記されておらず、今後の課題です。 また、「スクールカウンセラー等の心理、福祉に関する専門的な知識を有する者の参画を図る」とされていますが、スクールカウンセラーは完全な外部者とはいえませんし、参加を義務付けられているわけでもありません。これらの点は、改善が必要です。
○情報共有について  教職員に対し、情報をいじめ対策委員会に報告・相談するよう求めていますが、教職員間での情報共有体制について具体的に定められているわけではありません。  独自の「クラスマネジメントシート」を活用して、学級担任等が児童生徒の状況を把握できるようにする点は評価できますが、学級担任がその他の教職員とどのように情報共有を行うのかという点の整備が求められます。この点は、今後の課題といえます。
○重大事態への対応について  いじめ対策委員会が重大事態に対応することとしています。調査自体は、教育委員会が行うものとし、教育委員会が、「京都市いじめ問題調査委員会」を設置して調査を行うこととしています。その委員に、専門的な知識・経験を有する利害関係のない第三者を含めるよう求めている点は一定の評価ができますが、その第三者とは具体的にどのような人物を想定しているのか、外部性が十分確保されているのかが明確ではありません。また、そもそも、いじめ対策委員会の構成員が不明であり、対応策の検討・実施の段階で第三者が関与できるのか否かが不明確です。
○基本方針見直しについて  規定はありません。



■8位 川口市 47ポイント
○全体評価 抽象的な記述にとどまる自治体が多い中、具体的な記載となっており、その点は高く評価できます。全体的に、これらの具体的記載は、いじめを予防、防止しようとする強い意志が感じられるものであり、高く評価しました。 ただし、いじめに対応する組織の構成については、透明性・実効性がどこまで担保できるのか、少々疑問な点もありました。この点の見直しが図られれば、国内有数のいじめ予防・防止対策を講じている地域という評価もできると思います。
○理念・方針について  「はじめに」、「第1 いじめ防止等のための対策の基本的な方向に関する事項」には、いじめに対し、地域一丸となって撲滅に取り組む意思が表明されています。特に、これまで行ってきた活動と、本基本指針をリンクさせ、さらに発展させていこうという姿勢は非常に高く評価できます。
○自治体内部の組織の設置・構成員について  常設で、「いじめ問題対策協議会」、非常設で、14条3項に基づく「川口市いじめ問題調査委員会」を設置するとされています。「川口市いじめ問題調査委員会」については、弁護士や精神科医などの第三者の参加を図るという点では、実効性、公正性、透明性が一定程度期待できます。しかし、当然には第三者が参加することになっておらず、また機関の設置が非常設とされています。さらに、設置されるのは、重大事態のうち、学校における調査が困難な場合のみと極めて限定されている点は問題であり、改善が望まれます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援について  市内中学校の代表者による「いじめゼロ中学生サミット」各学校の取組やアイディアを共有し各学校による自発的・主体的ないじめ根絶活動を支援する、各学校の児童会や生徒会を母体とした「いじめゼロ活動」を支援、指導助言を行うなど、具体的な方策が提示されており、高く評価できます。 ○啓発活動について  川口市人権教育推進協議会により、「人間であること」の活用による啓発活動が行われることが明確に示されており、また、11月を「いじめ撲滅強調月間」として、「川口いじめ根絶宣言」を周知すること、ネットいじめへの対策を具体的に啓発活動が行われることが明記されているので、その実効性を強く期待することができます。
○窓口の設置について  さわやか相談室や、教育相談業務の展開、子供教育相談、いじめ相談テレフォンを設置するなど、複数の相談窓口について具体的に記載があり、川口市が他の地域に先んじていじめの実態把握を積極的に行ってきていることがうかがえます。
○自治体による学校評価について  法34条を踏まえた評価をするという記載があり、この点では評価できます。さらに進んで、いじめが隠蔽されず、いじめの実態把握等が適切にできるためには、どのような評価姿勢をとるべきか(例えば、いじめの発生件数の多寡を評価基準としないことを明示するなど)の明示があると、より良いものとなると思います。
○学校内部の組織について  組織として、柔軟性を確保しようという姿勢、必要に応じて心理や福祉の専門家や弁護士など構成員に外部者を含める姿勢は評価できます。しかし、常に第三者が参加するわけではなく、実効性がどこまで担保できるかは、運用次第となっています。
○教職員間の情報共有について  教職員がいじめの発見通報を受けた場合には、個人での判断や、一部の教職員で抱え込むことがないよう、速やかに組織的に対応することが明示されており、教職員間が一体的に対応する体制の構築が期待できます。
○重大事態への対応に関する組織の構成について 重大事態に対しては、14条3項組織である「川口市いじめ問題調査委員会」が対応することとなっております。ただし、前述のとおり、当然には第三者が参加することになっておらず、設置されるのは、重大事態のうち、学校における調査が困難な場合のみと極めて限定されている点が、実効性及び透明性の担保という観点から不十分です。
○基本方針の見直しについて  毎年度、各施策の効果を検証し、見直しを検討するとしており、今後ともより良い施策がとられていくことが期待できます。



■9位 西宮市 44ポイント
○全体評価  全体としては平均的な水準以上の内容と考えられますが、一方で、いじめ防止の具体的な方策についてはやや抽象的な記載が目立ったことが残念でした。特に、実際にいじめ対策の中心となる各組織の具体的な役割や運営方法等についての記載が抽象的なものにとどまっていることは、非常に残念でした。いじめの現状認識や、地域の実情を踏まえた上で、各組織が実際にどのように活用されるものかについて具体的に検討していくことが求められます。
○理念・方針 いじめ問題の克服に向けた基本的な方向性として、(学校)(家庭)(地域)とそれぞれの主体ごとに取り組むべき課題を提示しており、法の趣旨を適切に読み取ろうという姿勢がうかがえます。
○自治体内部の組織構成  法14条3項に基づき教育委員会の附属組織を置く旨が明記されていますが、「いじめの防止等の対策を実効的に行うための調整及び審議を行う附属機関を設置する。」とあるのみで、具体的な構成員の属性については明らかにされておりません。構成員に医師会・弁護士会などの専門知識を有する、第三者性の高い外部者を含めることの明示が望まれます。
○啓発活動 「豊かな心の育成」と題し、道徳教育の推進や人権教育の推進をはじめ多くの活動が明記されていました。しかし、具体的な計画やPDCAサイクル等に関する記載がほとんどなく、抽象的な記載にとどまっていたことが残念でした。
○窓口の設置  いじめ予防の体制作りについて、具体的な相談内容に応じ「西宮市立こども未来センター」、「西宮市教育委員会青少年補導課」、と二つの窓口が公開されております。それぞれ受付曜日・時間、場所・電話番号が詳しく記載され、アクセスの向上を図ろうとしている点は高く評価できます。 また、兵庫県全体の相談窓口について紹介している点も、好印象でした。
○学校内部の組織 法22条に基づく学校内部の組織については、複数の教職員等が関わることが想定されてはいるものの、学級担任が構成員となることの具体的な記載がありません。内部職員を組織に入れることを求めるのみにとどまらず、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教職員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が必要です。 また、外部の有識者等の参加については記載がなく、これらの者が構成員となることについての規定がないことも残念でした。
○情報共有 教職員間の情報共有について、記載がありませんでした。情報共有は、学校全体でいじめ問題に取り組むための前提なるため、その仕組み作りは不可欠です。この点は改善が強く求められます。
○重大事態への対応  重大事態に対する組織の構成は、学校ないし教育委員会が中心とされており、外部の第三者が関与することが想定されていなかったため、重大事態に適切に対応する姿勢が読みとれませんでした。外部の専門家の参画を明記し、組織の透明性を確保することが強く望まれます。
○基本方針見直し  基本方針の見直しについては、「必要に応じて見直しを行う。」と抽象的に記されているのみで、見直しを具体的に検討する姿勢がうかがわれませんでした。実効的かつ事実を正確に評価し、基本方針を改めることができる見直し制度とすることが望まれます。



■同率10位 広島市 43ポイント
○全体評価 状況把握に対する姿勢がやや希薄であり、対策が十分にとれる仕組みとなっているとは言い難いといえます。今後の改訂により、いじめの現状認識や、地域の実情を踏まえた上での具体的な施策を展開し、仕組みを作ることが期待されます。(なお、広島市の基本方針には、別紙が付されています。評価の対象を「地方いじめ防止基本方針」に限定した今年度の調査においては、当該別紙を評価の対象から外していますが、寸評においては、別紙を含めて記載します。)
○理念・方針 全体的に抽象的な記載にとどまるのみで、地域の実情を踏まえたものとはいえないこと、及びこれまでの施策についても記載がないため、その有無がうかがえないことが残念です。
○自治体内部の組織の設置・構成員について 教育委員会に、付属機関として「専門的知識及び経験を有する第三者(心理や福祉の専門家、学識経験者、元警察官、弁護士)で構成する」組織を設置していることは、第三者性の確保及びそれが効果的に機能するための観点から評価できます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 生徒が主体的にいじめ防止に関わるよう「意見を取り入れる機会を確保する」との記載のみにとどまり、なんら具体的な記載がないことは残念です。 ただ、別紙において、児童生徒が主体となり「いじめの撲滅や命の大切さを呼びかける活動」を行うものとして年に2回活動期間を設けていることは、児童生徒が自発的にいじめをやめようと思うための足掛かりとして非常に重要であるといえます。
○児童生徒への啓発活動 「各教科、道徳、特別活動等、全教育を通じて」いじめ防止に向けた取組の充実を図るとしたのみで、抽象的な記載にとどまり、どのような施策を行うのかが不明確である点は改善が望まれます。 なお、同別紙において、道徳の授業を家庭地域に公開し、「児童生徒の命の大切さや思いやりの心をはぐくむ」として「命の参観日」を実施する旨を記載していることは教科科目ではないものを授業参観とし、地域と問題を共有しようとする姿勢として重要であると思われます。
○窓口の設置 窓口に関する記載がなく、いじめの実情を把握する姿勢が十分とは言えず残念です。 なお、別紙において、各学校に「ふれあい相談窓口」という相談機関を設置したり、広島市ホームページ上に「子どものいじめ」に関する情報提供窓口を設け、市民から広く情報提供を求めたりするなど、いじめの早期発見のための対策を具体的に示そうという姿勢は重要です。
○自治体による学校評価 いじめの隠蔽防止・いじめに対する適切な措置のために、適切な学校評価を行うことを求められる法34条に基づく体制が全くとられていません。「いじめの存在を学校評価において否定的に評価しない」「いじめ対策を怠った場合に、否定的評価が加えられる」等、他の自治体を参考とした何らかの対策が求められます
○学校内部の組織について 「複数の教職員、スクールカウンセラー等により構成される」とのみ要求しており、担任が構成員となることは抽象的にも記載がありません。科目担任、部活指導担当等、生徒と密に接する現場の教職員の参加が予定されていないことは、法の趣旨からすれば不十分です。また、専門的知見を有する者、外部者の参加も明示されていない点でも残念です。
○教職員間の情報共有 教職員間の情報共有についての記載がないことは残念です。いじめの状況を早期の段階で発見把握し、対策を立てることを学校全体で取り組む仕組みにつき、何らかの改善が求められます。
○重大事態への対応に関する組織の構成 重大事態に対応する取組として、「専門的知識を有する者」の学校への派遣及び専門的知識を有する第三者で構成される「広島市いじめ防止対策推進審議会」への調査要請を「必要に応じて」行うにとどめており、独立性・中立性・専門性を重視する法28条の趣旨を十分に反映していません。
○基本方針の見直し 「必要に応じて見直しを行う」とのみの記載にとどまっており、抽象的なものになっています。また、見直しに関わる構成員の記載などもなく、適切な見直しがなされる体制になっているとは言えないことが残念です。



■同率10位 松山市 43ポイント
○全体評価 具体的な施策を数多く行い、いじめ対策に意欲的に取り組む姿勢が、高く評価できます。また、組織相互の関係についての図式が読みやすいことも高評価です。他方、組織の具体的な役割や運営方法等の記載は抽象的なものにとどまり、実際にどのように活用されるかについては、より具体的な記載が期待されます。
○理念・方針 法の趣旨をくみ、地域住民など学校外の者と連携することを目標とする理念を明記していることは評価できます。また、いじめをなくす合言葉として、「さかせよう 笑顔の花 つみとろう いじめの芽」を掲げ、この標語のもとに独自の取組を展開してきたことや、これを踏まえて指針を策定したことが記載されている点も高く評価できます。
○自治体内部の組織構成 14条3項に基づく常設組織としており、その構成員に医師会・弁護士会などの専門知識を有する、第三者性の高い外部者を含めることを明らかにしている点は、評価できます。
○啓発活動 「まつやま教育プラン21」という行政目標を掲げ、この実践のため数多くの施策を挙げていることが高く評価できます。中でも「いじめを考える学習会」は、学校外から講師を招き子どもたちと一緒にいじめを考える取組として、いじめ問題を学校だけに抱え込ませないという視点から大変評価できますし、「子どもから広がるいじめ0ミーティング」の実施で、子どもを主体とする意見交換を支援するなど、その独自の取組は高く評価できます。
○窓口の設置 いじめ関連の窓口について、松山市子ども総合相談センター事務所に「いじめほっとらいん」を設置したり、各小中学校に「いじめ実態把握専用メール」を設置することが具体的に記載してあることは評価できます。
○学校内部の組織 法22条に基づく学校内部の組織については、学級担任・養護教諭が関わることが想定されてはいるものの、組織の構成員となることを抽象的に求めるのみであり、すべての教員間で意識の共有ができる体制を作ることを目指す規定とはなっていません。この点は今後の改訂により改善されることが期待されます。また、専門的知識を有する外部者の参入を義務付ける規定がないことも、残念です。
○情報共有 教職員間の情報共有について、何ら記載がありません。学校全体としていじめ問題に取り組むための前提ですから、その仕組み作りは不可欠です。今後の改訂により改善されることが期待されます。
○重大事態への対応 重大事態に対する組織の構成は、教育委員会が中心となるものであり、外部の第三者が関与することが想定されていません。より透明性の高い組織を措定することが期待されます。単に第三者からの助言を求めることのみを定めていることは、事実の適切な解明のためにも不十分といえます。
○基本方針見直し 3年を目安に見直すことが記載されており、期間を明確にしていることは評価できます。ただし、見直しに関わる構成員についての言及がないことは残念です。実効的かつ事実を正確に評価して基本方針を改めることができる見直し制度となっているか、今一度検討の余地があるといえます。



■同率12位 大阪市 38ポイント ○全体評価 いじめを発見した場合の対処のルールを明確化し、いじめを受けた児童生徒の保護を図ることを第一に考えている点は高く評価できます。他方で、児童生徒の主体性を支援する取組や、主体性醸成のための啓発活動についての取組がなく、事態に対する未然防止の観点からの充実が望まれます。また、組織に関しても第三者性の確保のみならず、職員の位置づけや役割の明確化があればより法の趣旨が反映されると思われます。
○理念・方針 平成25年から「教育振興基本計画」において些細な兆候も見逃さず毅然とした指導をするなど早期発見に向けた姿勢がうかがえ、評価できます。また、いじめの具体例などを挙げ、児童生徒の日常的な生活の中にある行動につき観察することを求めるきめ細やかな内容となっている点も評価できます。
○自治体内部の組織の設置・構成員 自治体内部で第三者性の強い専門家チームを従来から派遣してきたことから、何らかの組織があることが見受けられる点は評価できます。しかし、自治体内部での具体的な組織構造が明らかでない点が、組織の位置づけ、構成員の明確性の点から改善が求められます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 自主的活動についての記載はありませんでした。いじめの未然防止のための活動がなされることが期待されます。
○児童生徒への啓発活動 啓蒙活動についての記載はありませんでした。具体的にどの教科科目で行われるのか、その内容はどのようなものを策定するのか等、他の自治体を参考にして何らかの指針が策定されることが望まれます。
○窓口の設置について 「ウェブ・サイト上の記入フォーム、電子メール、FAXのいずれでも連絡できる『いじめSOS』を設置することとする」とされ、窓口が多数あることは評価できます。また「24時間子供SOSダイヤル」「大阪市子ども相談センター『電話教育相談』」を設けるなど窓口の充実を図っています。
○自治体による学校評価 「隠蔽は厳重に対処する」として隠蔽防止を図っていることは評価できます。しかし、いじめの事実をもって学校をマイナスに評価しないことまでの記載があれば、さらに法の趣旨が反映されたものとなると考えられます。
○学校内部の組織 学級担任が構成員となることが明記されている点は高く評価できます。一方で、「心理や福祉の専門家等を加えて助言」を得るとの記載にとどまっており、外部の第三者が構成員となることを要求していない点は改善が求められます。
○教職員間の情報共有 管理職がいじめの可能性に気が付いた際に教員を指揮し情報共有を行う旨の記載があります。教員間で直接主体的に情報共有することを求める組織構造となればより法の趣旨を反映できると思われます。
○重大事態への対応に関する組織の構成 「委員は、専門性と第三者性(外部性・独立性)を基準として人選する」とあり、中立性公平性を担保するよう定められている点は評価できます。また、その第三者の具体例として弁護士を必ず含むものとしていることからこれらに比肩する専門家を人選することがうかがわれる点、肩書の公表を明記している点など公平性への配慮が行き届いているといえます。
○基本方針の見直し 基本方針の見直しについての記載はありませんでした。基本方針の策定と組織を活用した見直しの仕組みが作られることが期待されます。



■同率12位 名古屋市 38ポイント
○全体評価 教職員間での情報共有が必要であることを記載してある点は非常に高く評価できます。そして、学校内部の組織における会議内容の共有の仕組みをも考慮していることも非常に素晴らしいと思われます。また、組織間での連携につき関係図を示すなどわかりやすさにも工夫がみられます。一方で、学校教育の内容の具体性や、実際にいじめが生じた際の窓口の設置については改善の余地があると思われます。
○理念・方針 「いじめは、全ての児童生徒に関係する問題である」としていじめの問題に取り組む姿勢がみられます。また、地域で生じた具体的な事例をもとに「教育委員会・学校・家庭・地域・その他の関係者との連携のもと、いじめ問題の克服」に取り組むことを指すなど実情を踏まえた方針づくりを試みているといえます。
○自治体内部の組織の設置・構成員 教育委員会との連携のもと、「弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等」の専門的知識及び経験を有するものにより構成されることを明記している点、第三者性公平性、中立性が確保されています。もっとも「必要に応じて開催する」とされており常設するものではないことは早期の対策を図るための組織である点、改善が求められます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 「中学校・高等学校生徒会の創意と工夫にとんだ主体的なチャレンジを支援」するとある点は評価できます。ただし具体性に欠けており、児童生徒の主体的活動内容の場をどのように設計し支援するのかを明記すればさらに法の趣旨を反映したものとなると思われます。
○児童生徒への啓発活動 「人権教育を基盤とした、いじめの具体的な対処に関するスキルトレーニング等を盛り込んだ教育プログラムの実践を促進」するとされており、いじめを見過ごさないよう児童生徒に啓発する意識がうかがえます。ただし、その具体的内容やどの授業科目で行うのかなどの記載はないため、より一層の具体化が求められます。
○窓口の設置 窓口の設置については何ら記載がありません。
○自治体による学校評価 学校評価について、いじめの存在を学校評価においてマイナスに評価しないとの記載はありませんでした。何らかの対策が求められます。
○学校内部の組織 構成員に「複数の教職員・心理、福祉等の専門知識を有するその他の関係者」を想定しており、第三者の参加を求めている点非常に評価できます。ただし、複数の教職員が担任を含むかどうかの判断をしかねるものとなっているので、これを明らかにし、学校全体で担任が一度は組織にかかわり共通の認識を醸成する仕組みとなることを求めることが明記された内容となると法の趣旨を一層反映したものとなると思われます。
○教職員間の情報共有 「複数の教職員が個別に認知した情報の集約と共有化をはかることが必要である」との記載があり、学校での情報を全体で把握し、対策する姿勢が見受けられ大変素晴らしいものとなっています。
○重大事態への対応に関する組織の構成 専門的知識を有する第三者を構成員とするとされており、中立性を担保できる内容となっています。
○基本方針の見直し 基本方針を見直すことの記載はありませんでした。時々刻々と変化する児童生徒の生活環境を踏まえた指針にするため、見直しの期間やそれに関わる人員を定めておくことが求められます。



■同率12位 姫路市 38ポイント
○全体評価 啓発活動についての項目は素晴らしいと思われます。しかし、自主活動が少ない点で、バランスを失し啓蒙活動が素晴らしい分もったいないと感じます。また、いじめ対策の組織や教職員間の連携についての体制も今一歩改善の余地があるといえます。
○理念・方針 平成8年度よりいじめの問題の克服をめざし「姫路フレンドフル事業」などを中心に活動してきたことがうかがえ、意欲的な姿勢が評価できます。また、いじめを人権侵害であると評価し、これを放置しないこと、学校のみならず「市民総がかりでいじめ問題を克服」することを目指すと明記してある点で問題意識の高さがうかがわれます。
○自治体内部の組織の設置・構成員 常設の組織として「学校サポート・スクラムチーム」を編成し、「弁護士・医師・臨床心理士」を専門家として迎えることを記載している点、常設性や第三者としての専門家の関与がみられ、真摯にいじめ対策に取り組んでいると評価できます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 自主活動を支援するとの記載がなく、児童生徒が主位的にいじめを防止しようとする姿勢をはぐくむという法の趣旨を反映するため改善が求められます。
○児童生徒への啓発活動 道徳教育の時間などを使用し、大学と協働して「ライフスキル教育」の研究と実践をするとの試みが記載されており、独自性に優れたものになっています。その他にも、ストレスとストトレッサ―について国立教育政策研究所の資料を用いてわかりやすく解説がなされており、啓発活動への意欲の高さがうかがえる素晴らしい内容になっています。また、発達段階に応じたいじめ防止対策として教育プログラムを模索する姿勢が見受けられる点も高く評価できます。
○窓口の設置 教育相談窓口として「3歳から18歳までの幼児・児童生徒・少年に関する教育相談」を一元的に受ける体制を整えていることが記載されており、情報の一元化とともに窓口の所在を明らかにしていることは評価できます。
○自治体による学校評価 いじめの存在を学校評価においてマイナスに評価しない等の記載がありません。いじめの隠蔽防止・いじめに対する適切な措置のために、適切な学校評価を行うことを求められる法34条に基づく体制が全くとられておらず、何らかの対策が求められます。
○学校内部の組織 担任が参加することを想定していない点は、大変残念です。第三者の参加を求める記載もありません。いじめを学校内部で早期に発見し中立的立場から対策を立てるとの法の趣旨を反映させるため、組織の仕組みを改善することが求められます。
○教職員間の情報共有 教職員間の情報共有についての記載はありません。いじめを早期に発見し、一人の教員に抱え込ませず、多角的に事実を分析するために必要な手段を講じるべく、一層の改善が求められます。
○重大事態への対応に関する組織の構成 いじめ調査を行う組織に外部者を入れることについては記載があるものの、「いじめ事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者」と抽象的に記載されるのみであり、具体性に欠けている点が残念です。
○基本方針の見直し 毎年度の状況報告をふまえ3年後をめどに「学校サポート・スクラムチーム」において見直すとの記載があり、見直しにも学校外部の第三者をいれて行うことの記載があることは大変評価できます。



■同率12位 福岡市 38ポイント
○全体評価  いじめ防止等のために市が実施すべき施策について、新規に取り組むものについては「新規」、強化するものについては「強化」、継続して取り組むものについては「継続」と示しています。このことから法の趣旨を具体化しようとする姿勢がうかがえるとともに、PDCAサイクルの意識も垣間見え、評価できます。  他方、法律に即した指針になっていること自体は評価できるものの、市が実施すべき事項について具体的なものが示されていないことは残念でした。
○理念・方針  「命の教育の推進」、「人間関係・集団作りの推進」、「体験活動の推進」、「基本的生活習慣の定着と規範意識の育成」の4つの観点からいじめを生まない教育活動を推進しています。法の趣旨をくみとろうという姿勢は評価できます。
○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づき教育委員会が設置する「福岡市いじめ防止対策推進委員会」の構成員として、「学校教育に関して学識経験のある者、心理福祉等に関する専門的知識を有する者、弁護士、医師等の参加を図」るとして、第三者性の高い外部者を含めることを予定している点は、評価できます。もっとも、第三者の「参加を図り」としか記載しておらず、第三者の参加を義務付けていない点は残念でした。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 市が実施すべき事項として「いじめの防止のため児童生徒が自主的に行う活動への支援・啓発、その他必要な措置」が明記されています。ただ、法律の規定を単純に引き直した抽象的なものにとどまり、その具体的な内容は明らかではないため、実効性については、各学校の運用に依存するものと思われます。
○児童生徒への啓発活動 「道徳の時間の充実、命を大切にする心を育む体験活動の充実、学級活動の充実、校長 による講話の実施、人間関係をつくる教育活動の実施等の取組を引き続き推進する」と記載されています。児童生徒への啓発活動に関して取り組もうとする姿勢は一応評価できるものの、具体的な計画やPDCAサイクル等に関する記載がほとんどなく、抽象的な記載にとどまっていた点は残念でした。
○窓口の設置  いじめ関連の窓口について、福岡市こども総合相談センター「えがお館」を設置することが具体的に記載してはあることは評価できます。
○自治体による学校評価  「学校評価の中のいじめに関する項目については、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず・・・学校に必要な指導・助言を行う」としの記載があり、隠蔽防止の一定の配慮がある点は、国の基本方針と同様のものとなっています。ただ、いじめの認知・報告を真に促すには、前者「いじめの有無やその多寡」の評価対象としてのウエイトをより下げる必要があります。その点を意識した記載があればより良い内容となると思われます。
○学校内部の組織  法22条に基づき学校が設置する「学校いじめ防止対策委員会」のメンバーとして学校現場に携わる者の参画を求めていなかったのは残念でした。また、内部職員の構成がわからないので、明示することが望まれます。しかし、外部の有識者等の参加については「教育委員会と連携の上、心理・福祉の専門家、弁護士、医師、教員・警察官経験者などの外部の専門家と位置付け」るとして、外部の有識者等の協力を想定していることは評価できます。もっとも、「必要に応じて活用することができる体制を構築する必要がある」と記載するのみで、これらの者が構成員となることについて義務付ける規定がないことは残念です。
○教職員間の情報共有  法22条に基づき学校が設置する「学校いじめ防止対策委員会」の役割として、「いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動などに係る情報の収集と記録、共有を行う役割」が挙げられています。抽象的な記載にとどまっていため、具体的な仕組みを講じることを検討する必要があります。
○重大事態への対応に関する組織の構成  法28条に基づき重大事態に対応する組織について、構成員として「弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的な知識又は経験を有する者」として、外部の専門家を参画させることが明記されています。また、「組織に加える専門家は、当該重大事態の性質に応じて職能団体や大学、学会からの推薦による方法で選出する」として、中立性・公平性を担保するため外部者選出の方法も具体的に示されています。重大事態に対して、透明性を確保した組織により、適切に対応する姿勢は評価できます。
○基本方針の見直し 「国が法の施行状況等を勘案して、国の基本方針の見直しを検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じた際には、市としても国に準じて見直し等を検討する」と記載されています。見直しについて一応予定されている点は評価できますが、より主体的に見直しを検討する制度を構築することが望まれます。



■同率12位 横浜市  38ポイント
○全体評価  全体的に見て、抽象的な記載にとどまっていた点が残念です。特に、実際にいじめ対策の中心となる各組織の具体的な役割や運営方法等についての記載が抽象的なものにとどまっていることは、非常に残念です。各組織が、実際にどのように活用されるか、検討が不十分に感じました。
○理念・方針  「学校、保護者、地域」と、各主体を明記している点は、それぞれの主体の役割意識を自覚させるものと言え、評価できます。
○自治体内部の組織構成  法14条3項に基づき教育委員会が設置する「横浜市いじめ問題専門委員会」の構成員について、「弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有する者」と明記している点は、専門的な見識を持つメンバーを構成員とすることを義務付け、組織の第三者性を確保するものといえ、評価できます。
○自主的活動に対する支援  「主体性」「自主的」などの子供の主体性を尊重する文言がちりばめられていることから、児童の自主的活動に対して支援しようとする姿勢は読みとれます。総じて抽象的な記載にとどまっていることが残念です。
○啓発活動 いじめに関する啓発活動として、毎年12月を「いじめ防止啓発月間」とした上、「いじめ解決一斉キャンペーン」を実施する旨明記されています。具体的な活動が予定されている点は、評価できます。
○窓口の設置 法22条に基づき、学校が設置する「いじめ防止対策委員会」が、「いじめの相談・通報の窓口としての役割」を担うものとしています。この点、行政としても、いじめを受けた児童等が直接相談・通報することに特化した窓口等を具体的に記載することが望まれます。
○学校評価  「教育委員会は、いじめの問題を取り扱うに当たっては、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず・・・学校に必要な指導・助言を行う」との記載があり、隠蔽防止に一定の配慮がある点は、国の基本方針と同様のものとなっています。ただ、いじめの認知・報告を真に促すには、前者「いじめの有無やその多寡」の評価対象としてのウエイトをより下げる必要があります。その点を意識した記載があればより良い内容となると思われます。
○学校内部の組織 法22条に基づき学校が設置する「いじめ防止対策委員会」の構成員について、「複数の教職員」とするとの記載にとどまっています。この点、この組織が学校のいじめ対策の中核であり、そこにすべての教職員が実効的に関わるために、さまざまな教職員を参画させるべきであることが意識されておらず、改善されることが望まれます。 また、同委員会の構成員として、「心理や福祉の専門家、弁護士、医師、教員・警察官経験者など外部専門家」として、専門知識を持つ外部者の参入を予定している点は、組織の外部性を高めるものといえ、高く評価できます。もっとも、これらの外部専門家の参画について義務付けまでされていない点は、改善の余地があります。
○情報共有 情報の共有に関しては、「教職員全員の共通理解、保護者の協力」等と抽象的な記載にとどまっています。具体的な仕組みを講じることを検討する必要があります。
○重大事態への対応 重大事態に対応する組織について、構成員として、外部の専門家を参画させることが一切記されておらず、重大事態に対して、透明性を確保した組織により、適切に対応する姿勢が読みとれません。当該組織の構成員については、専門性、公平性・中立性を重視したものにし、それを基本方針に明記することが望まれます。


■17位 宇都宮市 37ポイント
○全体評価  理念・方針などから、いじめを理解し、その防止について真摯に取り組もうとする姿勢はうかがえました。しかし、具体的な方策についてはやや抽象的な記載が目立ったことが残念でした。特に、実際にいじめ対策の中心となる各組織の具体的な役割や運営方法等についての記載が抽象的なものにとどまっていることは、非常に残念です。各組織が実際にどのように活用されるものかについての検討が不十分に感じました。
○理念・方針  いじめの定義や理解に加え、児童生徒が「どういう行為がいじめになるのか理解していない」、「自分の行為を相手がどう受け止めているか認識できない」、「心の通う対人関係を構築する力が十分育っていない」等のいじめの原因を挙げた上、「児童生徒にいじめを正しく理解させるとともに、思いやりの心や互いを尊重しあう態度を育成するなど『心の教育』の充実を図る必要がある」として取り組むべき課題を提案しています。このように、現状と課題を把握しようとする姿勢は評価できます。もっとも、具体的な記載はなく、抽象的な記載にとどまっていたことが残念です。
○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づき教育委員会が設置する「(仮称)学校教育問題対策専門委員会」の構成員として、「職能団体や大学、学会等からの推薦を受けた弁護士、精神科医、大学教授、臨床心理士」と第三者性の高い外部者を含めることを明示している点は、特筆すべき重要な点だと思います。もっとも、同委員会の活動については「教育委員会からの要請」を受けてするものと記載されていますが、常設とするとより実効性の高いものになると思われます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 「児童生徒が策定した、いじめの防止等の行動指針である『うつのみや いじめゼロ宣言』に基づき、児童会生徒会を中心としたいじめ根絶集会等を実施してきたが、今後も、児童生徒が自主的に活動できる環境を整備する必要がある」として、支援に取り組む姿勢がみられます。
○児童生徒への啓発活動 「『いじめゼロ運動推進事業』を展開し、いじめゼロ強調月間を設けるなどして啓発を行う」と記載されています。児童生徒への啓発活動の重要性がはっきりと示されており、意欲的に取り組もうとする宇都宮市の姿勢がうかがわれます。しかし、具体的な計画やPDCAサイクル等に関する記載がほとんどなく、抽象的な記載にとどまっていた点は残念でした。
○窓口の設置 相談窓口を周知する旨は記載されているものの、具体的な窓口等の記載がありません。いじめを受けた児童等が直接相談・通報できる窓口を設置し、具体的に記載されることが望まれます。
○自治体による学校評価 いじめの存在を学校評価においてマイナスに評価しない旨が明記されておらず、隠蔽防止に対する配慮がうかがわれませんでした。いじめの実態を学校が積極的に開示していこうとのインセンティブを与える仕組み、姿勢について記載がなされることが望まれます。
○学校内部の組織  法22条に基づき学校が設置する「いじめ等対策委員会」については、抽象的に設置する旨が記載されているにとどまりました。 構成員の具体的記載についても「管理職や児童指導主任、生徒指導主事、スクールカウンセラー」等と、内部職員を組織に入れることを求めるのみにとどまっていました。全ての教職員が数年ごとに担当すること等、教職員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加を義務付ける規定がないことは残念です。
○教職員間の情報共有 いじめに関する情報の共有に関しては、「全教職員の共通理解」等と抽象的な記載にとどまっています。具体的な仕組みを講じることを検討する必要があります。
○重大事態への対応に関する組織の構成  法28条に基づき重大事態に対応する組織について、構成員として、外部の専門家を参画させることが一切明記されておらず、重大事態に対して、透明性を確保した組織により、適切に対応する姿勢が読みとれません。専門性、公平性・中立性を重視したメンバーとし、それを基本方針に明記することが強く望まれます。
○基本方針の見直し  「3年の経過」をめどに見直すことが記載されており、期間を明確にしていることは評価できます。もっとも、見直しに関わる構成員についての言及がないことは残念です。実効的かつ事実を正確に評価して基本方針を改めることができる見直し制度となっているか、今一度検討の余地があるといえます。



■同率18位 浜松市 36ポイント
○全体評価  いじめ防止の具体的な方策についてはやや抽象的な記載が目立ったことが残念でした。特に、実際にいじめ対策の中心となる各組織の具体的な役割や運営方法等についての記載が抽象的なものにとどまっていることは、非常に残念です。各組織が実際にどのように活用されるものかについての検討が不十分に感じました。
○理念・方針  法の趣旨をくみ、「家庭・学校・地域の連携」を目標とする理念を明記していることは評価できます。
○自治体内部の組織の設置・構成員 自治体内部の組織として、教育委員会内に、外部専門家等により構成される「いじめ対策等専門家チーム」を設置する旨明記されています。「弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家、警察官経験者等の専門的な知識及び経験を有するものを委嘱する」として第三者性の高い外部者を含めることを明示している点は、特筆すべき重要な点だと思います。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 「子どもが主体的にいじめについて考え、活動する機会を設け」るとして、支援に取り組む姿勢がみられます。ただ、その具体的な内容は明らかではないため、実効性については、各学校の運用に依存するものと思われます。
○児童生徒への啓発活動 「子どもの豊かな情操と道徳心を培い、心の通う人間関係を構築する素地を養うため、教育活動全体を通じて道徳教育の充実を図ります」と記載されています。ただ、具体的な計画やPDCAサイクル等に関する記載がほとんどなく、抽象的な記載にとどまっていたことが残念でした。
○窓口の設置  いじめ予防の体制作りについて、相談内容に応じ「教育相談支援センター」、「浜松市いじめ子どもホットライン」、「家庭児童相談室」の三つの窓口を公開しており、「浜松市いじめ子どもホットライン」については電話番号まで記載されていた点は大変評価できました。
○自治体による学校評価 いじめの存在を学校評価においてマイナスに評価しない旨が明記されておらず、隠蔽防止に対する配慮がうかがわれませんでした。いじめの実態を学校が積極的に開示していこうとのインセンティブを与える仕組み、姿勢について記載がなされることが望まれます。
○学校内部の組織  法22条に基づき学校が設置する「いじめ対策委員会」について、「学校の管理職やいじめ対策コーディネーター、および複数の教職員、心理や福祉等の専門知識を有する者等」を構成員とすることに加え、「学級担任や部活動顧問等、関係の深い教職員」に協力を求める旨明記されている点は、学校現場に携わる者の参画を求めるものとして評価できます。もっとも、後者については「必要に応じて」協力を求めるものと記載されるにとどまっており、教職員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加については「医師、教員経験者、警察官経験者等」の協力を想定しているものの、外部者が構成員となることを義務付ける規定がないことはやや残念です。
○教職員間の情報共有  いじめに関する情報の共有に関しては、「全教職員の共通理解」等と抽象的な記載にとどまっています。具体的な仕組みを講じることを検討する必要があります。
○重大事態への対応に関する組織の構成  法28条に基づき重大事態に対応する組織について、構成員として、外部の専門家を参画させることが一切明記されておらず、重大事態に対して、透明性を確保した組織により、適切に対応する姿勢が読みとれません。専門性、公平性・中立性を重視したメンバーとし、それを基本方針に明記することが強く望まれます。
○基本方針の見直し 見直しについての言及は一切なく、基本方針の見直しを具体的に検討する姿勢がうかがわれませんでした。実効的かつ事実を正確に評価して基本方針を改めることができる見直し制度とすることが望まれます。



■同率18位 静岡市 36ポイント
○全体評価  全体的に記述が抽象的でした。特に、児童への啓発活動やいじめ授業等については具体的な活動内容、カリキュラムの内容が記載されることが望まれます。
○自治体内部の組織の設置・構成員  地方いじめ防止基本方針に基づく地域におけるいじめの防止等のための対策を実効的に行うようにするために法14条3項に基づく教育委員会の附属組織を置く旨が明記されていません。教育委員会に、いじめ対策に特化した組織を設置するよう検討されることが望まれます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 児童生徒の自主的活動について支援する旨が記載されています。ただ、抽象的でその具体的な内容は明らかではないため、実効性については、各学校の運用に依存するものと思われます。
○児童生徒への啓発活動 いじめが児童生徒の心身に及ぼす影響、いじめを防止することの重要性、相談制度や救済制度等について広報啓発活動を行う旨記載されています。ただ、具体的な計画やPDCAサイクル等に関する記載が全くなく、抽象的な記載にとどまっていたことが残念でした。
○窓口の設置  いじめを受けた子どもに対する窓口が存在する旨は記載されていますが、抽象的なものにとどまっています。いじめを受けた児童等が直接相談・通報することに特化した窓口を設置し、具体的に記載されることが望まれます。
○自治体による学校評価 いじめの存在を学校評価においてマイナスに評価しない旨が明記されておらず、隠蔽防止に対する配慮がうかがわれませんでした。いじめの実態を学校が積極的に開示していこうとのインセンティブを与える仕組み、姿勢について記載がなされることが望まれます。
○学校内部の組織  法22条に基づき学校が設置する「いじめ防止等対策委員会」について、「学級担任や部活動顧問」等の学校現場に携わる者の参画を明記していた点は評価できます。しかし、これらの者については「必要に応じて」協力を求めるものと記載されるにとどまっており、教職員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加については記載がなく、これらの者が構成員となることについての規定がないことは残念です。
○教職員間の情報共有  いじめに関する情報の共有に関しては、「全教職員の共通理解」等と抽象的な記載にとどまっています。具体的な仕組みを講じることを検討する必要があります。
○重大事態への対応に関する組織の構成  法28条に基づき重大事態に対応する組織について、構成員として、外部の専門家を参画させることが一切明記されておらず、重大事態に対して、透明性を確保した組織により、適切に対応する姿勢が読みとれません。専門性、公平性・中立性を重視したメンバーとし、それを基本方針に明記することが強く望まれます。
○基本方針の見直し 見直しについては「いろいろな状況を踏まえたうえで、PDCAサイクルにより適宜見直しを行い、必要な措置を講じ」る旨の抽象的な記載がなされるにとどまっています。実効的かつ事実を正確に評価して基本方針を改めることができる見直し制度とすることが望まれます。



■同率20位 熊本市 35ポイント
○全体評価  組織における第三者性の確保など、すぐれた施策が打ち出されている点もいくつかありました。他方で、他の自治体と比べてほとんど言及がない点、抽象的な点もありました。こういった点が全体的な評価を押し下げる原因となってしまいました。
○理念・方針  理念として、熊本市が目指す「徳・知・体」の調和のとれた教育を基礎としたいじめ対策を行うことを記載しており、やや抽象的ですが、地域の実情を意識した内容となっています。また、いじめの定義として具体例を挙げてわかりやすく示しているなど、法の趣旨を反映した内容となっています。
○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づき、「熊本市いじめ防止対策等専門委員会」を設置するとされています。委員の構成として、弁護士、学識経験者、臨床心理士、医師など、第三者性の確保をすることで中立性の確保をすることが定められており、この点は高く評価できます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 児童の自主的な活動に対する積極的支援については明示的記載がなく、今後この点についても検討が必要と思われます。
○児童生徒への啓発活動 啓発活動をすることについての言及はあったものの、抽象的なものであり、実効性がどの程度担保できるかやや疑問が残ります。 ○窓口の設置  保健室を生かした相談体制の構築・充実、スクールソー
シャルワーカーやスクールカウンセラー、心のサポート相談員などの窓口が示されていました。とはいえ、常勤なのか非常勤なのか、連携体制はどのようになっているのか等は不明確であり、やや具体性に欠ける記載となっている点は残念でした。
○自治体による学校評価 「いじめの有無や多寡のみによって学校や教職員を評価するのではなく」「取組や対応を評価」との視点が示されていることで一般的な基準は満たされています。より積極的にいじめの事実を開示するインセンティブを与えるような記載があればなお良いと思います。
○学校内部の組織  構成する教職員として、学級担任や部活指導に関わる教職員の参加を前提としていることは、いじめのフィードバックを期待できる点で評価できます。さらに、教職員だけでなく外部の専門家の参加も参加することには一応の言及はあります。ただし、いずれも参加を義務付けておらず、実効性の確保という観点からはやや残念です。
○教職員間の情報共有  教職員間での情報共有について言及はありませんでした。各教職員がいじめの事実を一人で抱え込むことは、時として深刻な事態を引き起こします。情報共有の重要性及び具体的な共有方法の指針は基本方針で示すべきです。
○重大事態への対応に関する組織の構成  重大事態に対応する組織として、14条3項委員会の、「熊本市いじめ問題調査点検委員会」が行うとしています。調査及び検証は第三者による高い透明性を確保した下で行われることが期待できます。
○基本方針の見直しについて 見直しを行うことは掲げられていますが、どういった意見を反映し、どのように意見の集約を行うのかなどの具体的な方法についての言及があればより良いと思います。



■同率20位 新潟市 35ポイント
○全体評価  高い透明性を確保した組織づくりや、独自の啓発活動など、いくつか高く評価されるべき点はありますが、全体としては抽象的な記載が多く、実効的な対策を行うための指針としては不十分な面が見受けられた点は残念でした。
○理念・方針  理念として、「いじめがどの子どもにも起こりうる」ことや、「子供たちがお互いに認め合い、支え合い、高め合う人間関係を築くこと」など、単なる条文の引き写しではない、独自の理念が掲げられています。
○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づき、「新潟市いじめ防止対策等専門委員会」を設置するとされています。委員の構成として、弁護士、精神科医、学識経験者、臨床心理士など、第三者性を確保することで中立性が確保されており、この点は高く評価できます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 児童の自主的な活動に対する積極的支援については明示的記載がなく、今後この点についても検討が必要と思われます。
○児童生徒への啓発活動  特に、インターネットを用いたいじめに対し、指導主事やスーパーサポートチームによる啓発活動の充実が図られている点は新潟市独自のもので特筆すべきことといえます。ただ、スーパーサポートチームの位置づけについては、本指針からは不明であり、この点を具体化することが望ましいといえます。
○窓口の設置 スクールカウンセラー、スーパーサポートチーム、スクールソーシャルワーカー、区教育相談室、訪問相談員などの活用が示されており、これらの各機関が窓口となると思われますが、各機関の活動内容や連携についての記載はなく、抽象的な記載にとどまっている点が残念でした。
○自治体による学校評価 「いじめの有無やその件数のみを評価するのではなく日ごろからの児童生徒の理解や、いじめの防止、早期発見、いじめが発生した際の迅速かつ適切な対応、組織的な取組等を評価する」としており、一般的な基準は満たしています。ただ、いじめの認知・報告を真に促すには、前者「いじめの有無やその多寡」の評価対象としてのウエイトをより下げる必要があります。その点を意識した記載があればさらに良い内容となると思われます。
○学校内部の組織  教職員だけでなく、「医師、スクールカウンセラーや社会福祉士などの心裡や福祉の専門家」などの外部者の委員の参加を前提とした記載となっている点は高く評価できます。しかしながら、外部者の参加を義務付けているような記載はなく、どこまで実効的かは運用次第となっています。
○教職員間の情報共有  「いじめを認知したら、特定の教職員で抱え込むことなく、速やかに組織で対応する」とあり、教職員間での情報の共有が重要であることが明示されている点は評価できます。ただし、どのような方法で共有化を図るかの記載はなく、より具体的な方法を検討することが望まれます。
○重大事態への対応に関する組織の構成  重大事態に対応する組織の委員として、いじめの調査を14条3項委員会の、「新潟市いじめ防止対策等専門委員会」、が行い、その検証を「新潟市いじめ問題調査点検委員会」が行うとしています。後者は「専門的な知識及び経験を有する第三者」を委員とすると明示的に示しており、調査及び検証はいずれも第三者による高い透明性を確保した下で行われることが期待できます。ここまでの透明性を確保する方針を打ち出している自治体は全国的にも少なく、高く評価できます。
○基本方針の見直し 見直しを行うことは掲げられていますが、どのように意見の集約を行うのかなど具体的な方法についての言及があればより良いと思います。



■同率22位 さいたま市 32ポイント
○全体評価  いじめに対して積極的に対策を講じる姿勢は表明されているといえます。ただし、その内容は抽象的なものが多く、実際にどこまで実効的なものとなるかには疑問が残ります。
○理念・方針  理念として、いじめ防止対策推進法が引用されています。自治体の特性を加味したものとなっていることがより望ましいです。
○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づく常設の組織「さいたま市いじめのない学校作り推進委員会」の構成員として、「学識経験を有する者」、「関係団体の代表者」、「市職員」などと第三者性を一定程度高めるような内容となっています。もう一歩進んで、医師、心理の専門家、NPOメンバー、弁護士などの完全な外部者を組織のメンバーとする旨を明記するとより第三者性の高いものになると思われます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 「児童会、生徒会において、児童生徒が主体的にいじめの防止等のために取り組むことができる活動の場を設定する」とし、「さいたま市子ども会議」の開催、児童会・生徒会役員、各委員会の代表等を構成員とする校内子どもいじめ対策委員会などを、具体的に記載している点は評価できます。
○児童生徒への啓発活動 児童生徒への啓発活動が重要であること、積極的に取り組むことはうかがわれる内容ですが、具体的な活動内容についての言及はありませんでした。
○窓口の設置 各機関でいじめを把握することに努めるとの記載があるのみで、他の自治体にあるような、いじめの相談のための窓口についての具体的な表示はありませんでした。
○自治体による学校評価 特に言及がありませんでした。個々の学校の隠蔽を防ぎ、適切な対応を促すには、自治体の評価の姿勢を明示することは不可欠です。今後の改善が望まれます。
○学校内部の組織 保護者や地域関係者など、構成員に外部者を含める姿勢は評価できます。しかし、これが義務付けられているとはいえず、また、所掌事務として掲げられた事項も具体性に乏しいものとなってしまっています。加えて、構成員となる教職員として、担任や部活動の顧問等、現場の教職員が組織に参加するのか否かも示す必要があります。
○教職員間の情報共有  教職員間で情報共有をすることについて、明示的に言及した部分はありませんでした。担任による「抱え込み」を防止するためにも情報の共有方法に関する具体的な検討が必要です。
○重大事態への対応に関する組織の構成  重大事態に対応する組織は、14条3項組織と同じ、教育委員会の設置する「いじめのない学校作り推進委員会」とすると条例上定められています。この組織については、前述の通り第三者性が一定程度しか確保されておらず、特に透明性・第三者性を求められる組織である本組織としては適切なものといえるか疑問が残ります。
○基本方針の見直し 見直しを行うことは掲げられていますが、抽象的な内容であり、どういった意見を集約するのか、どうやって反映させるのか、より具体的に記載されることが望まれます。



■同率22位 相模原市 32ポイント
○全体評価  点数評価では振るわない順位となっていますが、全体的に見て、市を挙げて「絶対に防がなくてはなりません」と、しっかりといじめの問題に取り組む姿勢が見られ、好感が持てました。 より具体的な規定、また、生徒を主体とする規定が取り込めると、素晴らしいと思います。方針の見直しの際には、その点が改善されることを期待します。
○理念・方針  「はじめに」「いじめ防止等のための対策の基本理念」からは、市を挙げて子どもを守ると言う強い決意が示されていることに好感が持てます。基本方針を読む市民に対して、メッセージを送る姿勢もはっきりと読み取れます。市民宛ての資料もしっかりと添付されています。
○自治体内部の組織の設置・構成員 教育委員会が設置する「子どものいじめに関する審議会」の規定はありますが、その構成員は何ら規定されていません。実効性、公正性、透明性の観点から、第三者性の高い専門家を含めた組織とすることを姿勢として明示すべきです。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 児童生徒の自主的な活動について、しっかりと検討することが望まれます。
○啓発活動 推進する旨の規定はありますが、具体性がありません。一定程度、例示できればなお良いと思います。
○窓口の設置  規定はありません。
○自治体による学校評価  規定はありません。
○学校内部の組織  法22条に基づく組織としては、「教職員、青少年教育カウンセラー等」と記すのみで、具体的な構成員は判然としません。この組織が、「全教職員でいじめ防止等の共通理解を図り、学校全体でいじめ対策を行う中核となる役割を担う」とのことですから、どのような構成員とすべきかの指針も示すとより良い内容となります。
○教職員間の情報共有  全教職員間での共通理解が必要なことは読み取れますが、より積極的な規定が望まれます。
○重大事態への対応に関する組織の構成  法28条に基づき重大事態に対応する組織について、何ら構成員が規定されていません。 このような規定で、いざというときに迅速に、適切な組織を作ることができるのかは疑問です。深刻ないじめも、いつでも、どこにでも起こりうるという意識を持つことが期待されます。
○基本方針の見直し  「検証し、必要に応じて見直す」旨の規定がありますが、見直し期間を定めるなど、その実効性を担保することを考えた規定とすることが望まれます。



●●下位2自治体●●
■24位 岡山市 27ポイント
○全体評価  全体として、法の施行に伴い状況を改善していこうとの姿勢が感じられませんでした。基本方針よりも法律が上位にあることを十分考慮し、少なくとも法の趣旨を踏まえた見直しを図ることが望まれます。なお、表題が「岡山市いじめ等の問題行動及び不登校の防止に関する基本方針」となっていますが、法の趣旨をより反映するためにも、いじめを問題行動や不登校問題の一部分として捉えるのではなく、いじめと正面から向き合った上で、いじめに特化した基本方針の作成が望まれます。
○理念・方針  法律の文言を引用していますが、いじめが、児童等の尊厳の問題である点の指摘はなされていません。法律の趣旨をくみ取り、法律との整合性を、しっかりと検討する必要があります。
○自治体内部の組織の設置・構成員 「問題行動等対策委員会」は、法14条3項に基づく組織のようですが、その構成員については、「学識経験者や専門的な知識等を有する第三者等からなる」と定めるのみです。「等」が二つ重なっていることもあり、結局、誰が構成員になるのか判然としません。実効性ある第三者組織をしっかりと構築する規定とすることが望まれます。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 教育委員会と学校を主体とする規定のみで、児童生徒の自主的活動についての意識が薄いように感じます。「市民協働」を掲げる以上、今後の改訂では、いじめ問題の主体である児童生徒や、その保護者を主体とする規定が望まれます。
○啓発活動 「家庭への啓発」という項目はありますが、規定の中では「適切な情報提供を行う」との別にとどまり、積極的な活動が念頭にあるようには読み取れません。上記「市民協働」の観点からも、しっかりとした啓発活動規定を定めることが望まれます。
○窓口の設置  いじめ関連の窓口についての規定はありません。
○自治体による学校評価  学校評価についての規定はありません。
○学校内部の組織  法22条に基づき学校が設置する組織については、「教職員の他に専門的知識を有する者等を加えて構成する。」としており、外部の有識者等の協力を想定していることは評価できます。
○教職員間の情報共有  「教職員の共通理解と資質向上」という項目を設け、「同僚性を高め互いの資質を高め合う」旨規定しており、一定の配慮がなされています。
○重大事態への対応に関する組織の構成  法律に基づき適切に対応することを規定するのみで、その調査主体も「学校又は問題行動等対策委員会」によるものとするのみで、具体的に誰による調査なのか、調査主体の構成員が明記されていません。中立性・公平性・透明性を確保した組織により、適切に対応しようとする積極的な姿勢が望まれます。
○基本方針の見直し 「変化する状況に柔軟に対応するために」とし、見直し手続きの規定ぶりは、具体的なものとなっています。見直し時期のめどにつき規定があれば、より良い内容になると思われます。



■25位 八王子市 6ポイント(最下位) ○全体評価  この八王子市教育委員会作成の「八王子市いじめ防止基本方針」は、いじめの防止等のために社会総がかりでいじめの問題に対峙する姿勢が全く感じられません。全体的に法の文言をそのまま引用、または簡易に表現し羅列しただけの内容であり、きわめて抽象的な表現が多い一方、具体的な取組はない、などの酷評をせざるをえません。 本調査で上位となった他の都市等を参考に、早急に見直しが行われる必要があると思われます。
○理念・方針  いじめのない八王子市を作るという気概が全く感じられません。
○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づく組織は、規定されていません。
○児童生徒の自主的活動に対する支援 児童生徒の自主的活動を支援するのではなく、学校が「授業づくりや集団づくり」を行うことのみ規定されています。児童生徒を主体としての活動が規定されていないことは甚だ残念です。
○啓発活動 「いじめの問題の理解と対応について、保護者や関係機関等への啓発を行う。」とのみ定められており、具体的に、何をどう啓発するのか明らかでありません。 ○窓口の設置  「電話・来所によるいじめの通報や相談を受ける体制を整備する。」と述べられているのみであり、具体的な内容は全く記載されていません。
○自治体による学校評価  規定はありません。
○学校内部の組織  「複数の教職員その他の関係者」による組織を置くことのみ定めています。学校内部の組織ですから複数の教職員が関わるのは自明です。これだけでは、誰が構成員か全くわかりません。
○教職員間の情報共有  「組織的に対応する」と記すのみで、どう組織的に対応するのか、そもそも「組織的に」とはどういったことなのか、全く明らかでありません。 ○重大事態への対応に関する組織の構成 本方針で、「重大事態への対処」の項目の最初にあるのは、「必要に応じて警察への通報」を行うことだけです。相当の期間の学校欠席の場面などは、全く念頭にない内容で残念です。法律の内容をよく理解できていない可能性があります。
○基本方針の見直し このような規定はありません。

6 そのほか

【「自治体チェックリスト調査報告」ダウンロード】
上記に掲載した「自治体チェックリスト調査報告」をPDFでもご覧になれます。下記からダウンロードできますので、ご参照下さい。
「自治体チェックリスト調査報告 PDF版」

【マスコミ掲載情報】新聞を中心として報道されました!
朝日新聞「いじめ防止対策、効果は 「推進法」施行から2年半」2016年2月26日
朝日新聞記事サイトへ移動

毎日新聞「自治体の「いじめ対策」採点 NPOが実効性評価 「ストップいじめ!ナビ」弁護士チームの講評」2016年3月7日
毎日新聞記事サイトへ移動


――自治体の「いじめ基本方針」を独自にチェック――
「自治体チェックリスト」調査報告(2015年度版)

NPO法人ストップいじめ!ナビ 弁護士チーム
情報公開日:2016年2月12日 公開URL:http://stopijime.org

この情報の発信元:特定非営利活動法人ストップいじめ!ナビ
〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-5-2A 03-5925-8558(Tel&Fax)
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