統計データ

■いじめは「急増」も「急減」もしていない

いじめ報道が続くと、あたかも「またいじめがブームになっている」という印象を持つ人が出てきます。でも、いじめは、報道ブームとは関係なく、常に一定の数で存在しています。

いじめの認知(発生)件数の推移

  60年度 61年度 62年度 63年度 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度 6年度
小学校 96,457 26,306 15,727 12,122 11,350 9,035 7,718 7,300 6,390 25,295
中学校 52,891 23,690 16,796 15,452 15,215 13,121 11,922- 13,632 12,817 26,828
高等学校 5,718 2,614 2,544 2,212 2,523 2,152 2,422- 2,326 2,391 4,253
155,066 52,610 35,067 29,786 29,088 24,308 23,062 23,258 21,598 56,601
  6年度 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度
小学校 25,295 26,614 21,733 16,294 12,858 9,462 9,114 6,206 5,659 6,051 5,551 5,087
中学校 26,828 29,069 25,862 23,234 20,801 19,383 19,371 16,635 14,562 15,159 13,915 12,794
高等学校 4,253 4,184 3,771 3,103 2,576 2,391 2,327 2,119 1,906 2,070 2,121 2,191
特殊教育学校 225 229 178 159 161 123 106 77 78 71 84 71
56,601 60,096 51,544 42,790 36,396 31,359 30,918 25,037 22,205 23,351 21,671 20,143
  18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 注1)平成5年度までは公立小・中・高等学校を調査。平成6年度からは特殊教育諸学校、平成18年度からは国私立学校、中等教育学校を含める。
注2)平成6年度及び平成18年度の調査方法を改めている。
注3)平成17年度までは発生件数、平成18年度からは認知件数。
小学校 60,897 48,896 40,807 34,768 36,909
中学校 51,310 43,505 36,795 32,111 33,323
高等学校 12,307 8,355 6,737 5,642 7,018
特殊教育学校
(特殊教育諸学校)
384 341 309 259 380
124,898 101,097 84,648 72,778 77,630

「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/__icsFiles/afieldfile/2011/08/04/1309304_01.pdf

よく使われる文科省の統計は、「学校が認知した数」がカウントされています。これはあくまで認知件数=学校が把握できた数です。
 
例えば報道などでいじめ問題が注目されると、例年以上にアンケートなどに力を注ぐ学校が出てくるため、「報道で盛り上がった年は、いじめの認知件数が増える」ということになります。「いじめが増えたから、報道が増えた」というわけではないことに、注意してください。
 
文科省のグラフでは、1994年=平成6年と、2006年=平成18年に、「急増」しているようにみられます。しかしここには2つのマジックがあります。少なくとも、「報道などでいじめ問題が注目されたため、各学校が注意深く調査するようになり、認知件数が増えた」ということ、それから「社会問題として取り上げられたことを受け、文部科学省がいじめの定義を変えたため、より多めに数えられるようになった」という2つの要因が関わっています。

小学校4~6年 いじめ被害 仲間はずれ・無視・陰口(男子)

小学校4~6年 いじめ被害 仲間はずれ・無視・陰口(女子)

国立教育政策研究所生徒指導研究センター『いじめ追跡調査2004-2006』『いじめ追跡調査2007-2009』より
http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/shienshiryou2/3.pdf

国立教育政策研究所は、小学校のいじめ被害経験率を毎年調査しています。こちらは文科省の調査と方法が異なり、一人ひとりの生徒に、「どんな嫌な目にあったのか」を尋ねるというアンケート調査です。
 
例えば「仲間はずれ、無視、陰口」の被害経験の推移を見てみると、文科省の認知件数と異なり、年ごとに大きな増減があるわけではないことが分かります。つまり、メディアが取り上げるか否かに左右されて、「今年がいじめが流行っている」「今年は落ち着いている」といった解釈をすることは、データを見る限り妥当ではないということになります。
 
認知件数だけを元に、「増えている」「減っている」といった議論をし、さらには「社会が壊れている」「日本がおかしくなっている」といった抽象的な議論をするよりも、効果的なアプローチのレパートリーを共有することが何より重要です。

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■小学高学年から中学2年生は、いじめが特に多い時期

いじめは、起きやすい環境と、起きにくい環境とがあります。森田洋司や滝充らの研究では、「いじめられた子の割合は小学校のほうが中学校に比べて高い」ことが明らかになっており、学年が進むに連れ、徐々に減少していくことがわかります。

被害経験の学年進行による推移:(7学年分・男女)

いじめ被害:仲間はずれ・無視・陰口:週に1~2回

国立教育政策研究所・文部科学省編
『平成17年度教育改革国際シンポジウム「子どもを問題行動に向かわせないために ~いじめに関する追跡調査と国際比較を踏まえて~」 報告書』より
http://www.nier.go.jp/symposium/sympoH18/h17sympo18221j.pdf

その一方で、文科省の統計では、「認知件数」のピークが中学1年、2年の時期にあることが分かります。これは、学校側が「いじめと認識しやすい」ために数字があがるということが考えられます。

学年別いじめの認知件数

「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/__icsFiles/afieldfile/2011/08/04/1309304_01.pdf

とくに中学生男子のいじめは、小学校に比べて、「頻繁化・長期化」しやすい、すなわち「深刻化」しやすいことが指摘されています。頻繁化・長期化すればするほど、被害生徒の辛さが大きくなってしまいます。

いじめの継続期間・学年別

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

いじめがエスカレーションをし、固定化しないよう、早期発見と解決が必要となります。いじめが多く発生しやすい学年をあらかじめ知っておくことで、学校全体で予め年間計画を立てておいたり、アンケート調査や見回りなどを強化するなど、しっかりとした対策を取ることが重要となるでしょう。

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■「いじめから逃げろ!」が独り歩きすると、危険もある

いじめについての報道が盛り上がると、著名人たちにメッセージを求めるメディアが続出します。その中でしばしば見受けられるメッセージが、「いじめから逃げろ」というものです。
 
このメッセージは、「死ぬくらいなら、逃げてでも生き延びろ」という意味であるなら、とても重要なものです。今いる場所以外にも、生きていく選択肢はたくさんある。そのことは、もっと広く、強く訴えられる必要があります。
 
しかし一方で、「いじめにあった場合は、逃げるのがベストの選択肢」という意味にまで広げてしまうと、微妙になります。

いじめられたときの行動と継続期間

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

図は、いじめられた時にどのような行動をとったのか、それといじめが短期化したか長期化したかの関係を表す図です。「泣いた」「逃げた」という選択肢を答えた者は、長期化している割合が高いことがわかります。
 
このデータは、いくつかの解釈が可能です。何かしらのリアクションが見られることで、いじめっ子を満足させ、いじめをさらに継続する楽しみを与えるということになるのかもしれません。また、「やめて」と言わなそうな子があえて狙われているため、「泣いた」と答えてしまう子どもが長期的にターゲットに選ばれている結果なのかもしれません。
 
いじめ空間から脱出することは重要です。しかしそれが即座に、学校への不登校などに結びつくと、リスクが増えます。不登校を選択肢したり、学校を中退したりすると、学歴上の不利が生じたり、教育の機会を失うことで、損をしてしまいます。
 
「逃げろ」というのが、新たな自己責任論の温床になっては、意味がありません。「逃げる」ということが、被害者が学校空間からドロップアウトするということを意味しないで済むよう、学校側が生徒を保護し、いじめが止まるように適切な対応をすることが必要になります。

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■日本では他国より、「傍観者」の割合が多く、「通報者」「仲裁者」が少ない

いじめを止めるには、第三者の介入が重要になります。「いじめを止めて欲しい人」を尋ねると、特に、友達、担任、保護者の名前があがります。

いじめをとめてほしい人

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

いじめ研究者の森田洋司は、いじめについて考えるための基礎的な枠組みとして、「いじめの四層構造論」を唱えました。これはつまり、いじめには常に、「いじめっ子」「いじめられっ子」「観衆」(周りではやし立てる者)「傍観者」(見て見ぬふりする者)が関わっているという見方です。
 
この見方にのっとれば、友達に止めてほしいというのは、要は「傍観者」を減らし、言うなれば「通報者」「仲裁者」を増やしてほしい、ということになります。

クラスの誰かが他の子をいじめているのを見たときの対応の構成割合

対応 平成16年 平成21年
総数 小学生
5~6年生
中学生 高校生等 就職・その他
総数 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 -
「やめろ!」と言って止めようとする 18.0 16.9 21.6 11.6 24.1 13.4 15.1 -
先生に知らせる 21.4 25.7 26.1 25.3 39.7 25.1 14.8 -
友達に相談する 36.2 36.4 25.9 48.0 22.1 39.7 44.3 -
別に何もしない 24.4 21.0 26.3 15.1 14.1 21.8 25.8 -

注)「高校生等」とは、「高校生」、「各種学校・専修学校、職業訓練校の生徒」の合計である。
 
厚生労働省『平成21年度 全国家庭児童調査』より
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/72-16b.html

しかし、厚生労働省の調査からは、小学校から中学校にかけて、「仲裁者」(止めろと言って止めようとする)と「通報者」(先生に知らせる)が減少し、「傍観者」(別に何もしない)の割合が増えていくことが分かります。
 
「傍観者」が増加するということは、頻繁化・長期化しやすい中学時代のいじめを、ますます深刻化することにつながる可能性もあります。

「傍観者」の出現率の学年別推移

「仲裁者」の出現率の学年別推移

国立教育政策研究所・文部科学省編
『平成17年度教育改革国際シンポジウム「子どもを問題行動に向かわせないために ~いじめに関する追跡調査と国際比較を踏まえて~」 報告書』より
http://www.nier.go.jp/symposium/sympoH18/h17sympo18221j.pdf

こうした傾向は、国際比較においても顕著です。イギリス、オランダとの比較を行った場合、日本以外の2国は、中学生から「傍観者」の数が減少しているのに対し、日本はむしろ増加してしまっていることが分かります。一方で、「仲裁者」の数は減少し続けています。
 
もちろん、国際比較データは、単純比較することができないので注意も必要です。日本のいじめは、海外のいじめよりも、「暴力的ないじめ」が少なく、「コミュニケーション操作系のいじめ」の割合が多いため、「仲裁者」「傍観者」の意味なども変わるためです。
 
とはいえ、特に中学校時代において、「仲裁者」「通報者」を増やすことができるのかというのが、課題の一つであるとはいえるでしょう。つまりは、早期段階で介入しやすい環境づくり、いじめを通報しやすい信頼関係を築く学校づくりが求められるということです。

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■いじめは、「日本特有の現象」ではない

いじめについて議論になると、「日本人は陰湿だから」とか「昔はこうでなかった」といった議論が横行します。しかし、こうした議論は事実にそぐわない上、解決に結びつかない無駄な時間を費やすものであるため、無視したほうがいいでしょう。
 
例えば『世界のいじめ 各国の現状と取組み』(森田洋司監修、金子書房、1998)には、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、アメリカ、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、ポーランド、ベルギー、オランダ、ドイツ、フランス、スイス、アイルランド、スコットランド、イングランド・ウェールズ、スペイン、ポルトガル、イタリア、中近東・アフリカ・ラテンアメリカ諸国と、それぞれの国・地域のいじめ事情や対策などがまとめられています。
 
それらのデータを見る限り、日本だけが突出していじめが多い、ということは言えません。同調性やら学力重視やら消費社会やらゲーム感覚やらといった、「日本国内のなんとなくの風潮」といじめを絡めて論じる議論を講じる人は、だいたいにおいて海外でもいじめが頻発している事実を知りません。
 
もしあなたがネット上で「Bullying」(いじめ)といったキーワード検索すれば、海外のいじめ動画がヒットしたり、いじめを止めるように呼びかけるウェブサイトなどにたどり着いたりするでしょう。中国や韓国でもいじめ事件が、日本で報じられる機会も増えています。いじめ自殺もまた、悲しいことに様々な国で起こっています。
 
比較研究などによって、「日本独自の背景と対策」を論じることは重要ですが、「日本のいじめは~」「日本人は~」と当てずっぽうな文化論を振りかざすのは、とても賢明とはいえません。
 
また、いじめ自殺が社会問題化したのは80年代からではありますが、戦前より、いじめ自殺はたびたび報道されてきました。これも同じく「現代人は~」といった文化論として消費するのは無意味でしょう。
 
起きやすい場所や要因などを調べ、効果的な対策を検討する。そうした丹念な議論こそが求められています。

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■いじめには、発生しやすい場所(いじめスポット)がある

いじめは、どういう場所で発生しやすいのでしょうか。森田洋司らの調査では、一番起きやすいのは「教室」で、次いで「廊下や階段」となっています。

学校の中での被害場所

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

田中美子の調査でも、「教室」が最も多いという結果がでています。

田中美子『「いじめ」のメカニズム』(世界思想社、2010)より

休み時間や昼休みなど、教師の目が届かない時間帯や場所で、いじめは起きやすくなります。教育者は、こうした「いじめスポット」を把握することで、重点的に注意を払うことが重要になります。

学校の外での被害場所

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

学校外ではどうでしょうか。最も多いのが、登下校中となっております。学校外でのいじめについても、頻繁に起きやすい場所については、見回りなどの対策が重要になることでしょう。

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■いじめには、発生しやすい月(いじめピーク)がある

いじめは、どういう時期に起きやすいのでしょうか。いくつかの調査は、いじめが発生しやすい月にも、一定の傾向があることを示しています。

過去三年間のいじめ認知被害者の数(小学校)

過去三年間のいじめ認知被害者の数(中学校)

「平成21年 群馬県生徒指導上の諸問題調査結果報告書」
http://www.karisen.gsn.ed.jp/boe/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=373

例えば「群馬県 生徒指導上の諸問題調査結果報告書」によれば、いじめは「5~6月」と「10~11月」に、大きく増加していることが分かります。小学・中学共に、長期休暇が終わり、学期が落ち着いた頃に、いじめが増加しています。
 
特に2学期は、学期の期間が最も長く、行事も多いため集団行動が増えます。一学期の延長で行われるいじめも多いため、より一層の注意が必要でしょう。
 
もちろん、このデータが全ての学校に当てはまるわけではありませんし、これもあくまで認知件数であるため、目安のひとつでしかありません。それでも学校によっては、こうした時期を踏まえ、集中的に「いじめ対策強化月間」を設けているところもあります。いじめが発生してから対処するだけでなく、いじめが起きにくい環境を作るための計画づくりも重要となります。

曜日別

曜日 団体数 最大時回線数 総実施時間数 かけた人数 つながった率 平均通話 総通話時間 稼働率
月曜日 19団体 36回線 162時間 964名 75.2% 5分31秒 66.6時間 41.0%
火曜日 14団体 21回線 98時間 817名 65.6% 5分48秒 51.8時間 52.9%
水曜日 16団体 27回線 125時間 843名 65.8% 6分37秒 61.2時間 49.1%
木曜日 16団体 24回線 106時間 907名 69.4% 5分47秒 60.6時間 57.4%
金曜日 17団体 28回線 137時間 1,060名 79.6% 5分01秒 70.5時間 51.3%
土曜日 16団体 24回線 116時間 829名 72.4% 5分30秒 54.9時間 47.5%
日曜日 6団体 6回線 25時間 289名 36.7% 5分09秒 9.1時間 35.7%

「チャイルドライン支援センター 年次報告2012」より

いじめに関する電話相談を受け付けている特定非営利活動法人「チャイルドライン支援センター」の年次報告によれば、「月曜日」と「金曜日」には電話相談が増えていることが分かります。おそらく、嫌な一週間が終わった日、そして嫌な一週間が始まる日に、ストレスを吐き出したくなる生徒が増えるということでしょう。
 
もっとも、こうした傾向が、全ての地域・学校に当てはまるかどうかはわかりません。そこでなにより、学校ごとの「いじめピーク」「いじめスポット」を把握することがまずは必要となるでしょう。その上で、曜日ごとのストレス変化に目を配り、相談や見回りなどを強化するといった対応が、学校側にはもとめられます。

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■多くのいじめは、同性のクラスメイトによって行われている

いじめの多くが教室で行われていることからもわかるように、主ないじめは、クラスメイトの間で行われています。

いじめた子

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

現在の日本の学校にはクラス制度があるため、一番仲の良い友達と別のクラスになってしまったり、ウマが合わない特定の人と、1年間以上、同じ空間にいる必要が生じます。また、ほとんどの学校では席順が固定されているため、近くの席や班のメンバーが誰なのかによって、一喜一憂しなくてはならなくなっています。

いじめた子の性別

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

また、多くのいじめは、同性によって行われますが、特に女子の場合は、男子からのいじめも多くなっています。
 
クラスでのいじめが主になるため、いじめ発見・仲裁においては、どうしても担任教師の役割が大きくなります。しかし、担任教師のスキルには個人差があるため、たまたま「ハズレ」な教師にあたったがゆえにいじめが解決されなかった、というのでは困ってしまいます。
 
クラス内・教室内でのいじめに対し、担任教師以外の人の確認・介入・通報などが可能な状況づくりが重要となります。担当教員以外の教師や保護者などの見回り、スクールバディシステムなどによるフォローは、そうした対策のひとつになるかもしれません。

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■「いじめ自殺報道」ばかりに議論を引っ張られず、不登校の議論を

区分 国立 公立 私立
小学校 2人 408人 5人 415人
中学校 4人 2,140人 49人 2,193人
6人 2,548人 54人 2,608人

平成22年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、いじめがきっかけだと把握されている不登校は、小中学校だけで年間2608件。
 
中退や不登校を経験した人は、そうではない人に比べて、ハンディキャップを背負わされてしまいます。いじめから脱出しようとすることが、学校で教育を受ける権利を放棄しなくてはならないこととイコールにならなくてもすく社会づくりが必要となります。
 
いじめ事件が報道されると、「自殺」にばかり注目が集まりがちです。しかし、「自殺」よりも高確率で発生する「不登校」のリスクについては、まだまだ議論が不十分です。

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■学校環境を改善できない教師は、いじめのエスカレーションに加担している

学校やクラス内の雰囲気は、いじめの増減に大きな影響を与えます。

被害加害経験別にみた「クラスの雰囲気」

「みんなと調子をあわせないときらわれると思っている人が多い」

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

同調圧力を多く感じがちな生徒がいる教室では、異質性が攻撃されやすい環境であるために、いじめ被害に合う人の割合が増加します。他にも、集団主義的な教室、モラル低下がみられる教室などでも、増加の傾向が見られます。

子どもの学級イメージといじめ経験率

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

「クラスの雰囲気がよくない」という言葉で表現されることが多いと思いますが、排除性が強く、誰かを助けるという態度が共有されていない教室では、いじめの加害・被害経験が増加します。逆に、そうではない教室では、いじめの加害・被害経験そのものを減らせているということにもなります。
 
多様性に寛容で、集団主義的ではないがモラルの共有が見られる教室では、そうではない教室に比べ、いじめの発生件数を抑えられるということです。

「深刻ないじめ」に対する教師の認知

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

いじめが深刻化(長期化・頻繁化)する教室では、「教師がいじめを知っている」割合が高くなります。さらに、先生は何もしてくれなかった」の割合に注目すれば、示唆的な情報が得られます。

「深刻ないじめ」に対する指導

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

小学校では、いじめが深刻化している教室において、「いじめをなくそうとしてくれた」割合が高くなっています。一方で、中学校では、「いじめをなくそうとしてくれた」割合が低くなっています。
 
コレラを見る限り、「いじめを認知しているが、いじめを止めるのに失敗し、なめられてしまった」パターンと、「いじめを認知しているが、いじめを止めることもせず、放任・許容していると取られてしまった」パターンで、いじめがエスカレーションすることがあると捉えることができます。

「深刻ないじめ」のクラスメートの認知

「深刻ないじめ」のクラスメートの対応

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

クラスメイトがいじめを認知しているにもかかわらず、仲裁などが行われない場合も、いじめが深刻化しやすくなっています。
 
「いじめを許さない環境」、つまりはストレスが少なく、いじめ加害が放任されず、通報や仲裁が行われやすい環境を作ることが重要になります。いじめを、参加している個人同士だけの問題だと思わず、学校空間・クラス空間などからストレス条件を減らし、いじめの発生を抑えること。早期介入への信頼を築くことで、いじめのエスカレーションを防ぐこと。こうした観点に注目し、効果的なメソッドを導入していく必要があります。

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■少人数学級でいじめが減るわけではない。但し、他の手段との連携可能性はある

少人数学級のほうが、大人数の学校よりもいじめが少ない、というほど単純では無さそうです。

加害経験率と学級規模(左) / 被害経験率と学級規模(右)

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

ただ、「人出を増やす」ことが無駄であるとは言えないでしょう。毎日新聞の調査では、多くの教師が、いじめに対する対応が思うようにできない理由として、「時間不足」をあげています。「人手」が多いことも考えれば、非常に示唆的です。

いじめ事案への対応に不十分な条件

毎日新聞 2012年11月21日朝刊社会面(27)

OECD調査では、他の先進諸国などに比べて、日本は「教員一人あたり児童数」が多い国であることがわかっています。

OECD「図表で見る教育2005」より

カウンセラーなどのプロを育成し増員する、という選択もありますが、一方で、教員を増員する、保護者の学校参加を増やす、NPOや大学などの機関と連携する、事務仕事の分担を進める、地域ボランティアやOBと連携するなど、人手を増やすことで教師一人あたりの負担量を下げることで、児童と向き合う時間を確保するなどの対策も必要でしょう。

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■「教師は役立たない」という意見は、「あまり介入できていない」ためであり、「介入が無駄である」というわけではない

「教師は役立たない」という批判はよく聞きます。「先生は何もしてくれなかった」という批判の声を、元当事者があげることもしばしばあります。そして、「何かしてくれても、無駄だった」という意見もよく聞きます。
 
では、全体的な傾向として、教師の介入の程度とその効果は、どのようになっているのでしょうか。

教師の対応とその効果

森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より

いじめ被害全体の中で、教師が知らない、あるいは何もしてれないという人の割合は、なくそうと努めてくれた割合よりも少ないというデータがあります。これは10年以上前のデータであるため、今は改善されている可能性もありますが、この数値を高めることは重要となるでしょう。
 
一方、教師がいじめをなくそうとしてくれたケースにおいては、6割以上が「なくなった」「少なくなった」という結果になっています。介入の方法論をより効果的なものにすることで、この割合を向上させることも重要となります。
 
いじめへの介入が逆効果になる場合は、その介入の仕方が問われる必要があるでしょう。教師への相談をしやすくし、認知割合を高めながら、効果的に対応していくこと。そのための方法論をシェアすることが急務となっています。

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DWANGO Co.,Ltd.