緊急提言・メッセージ2021

緊急提言・メッセージ2021

「長期休み明けブルー」にご用心 子どもたちのストレスケアを!

私たち「ストップいじめ!ナビ」は、夏休み明けのこの時期に、つらい気持ちを抱える子どもたちがいることを受け、2021年の新たな「『長期休み明けブルー』対応のための提言・メッセージ」を発信いたします。

コロナ禍の対応

子どものみなさんへ

保護者のみなさんへ

教員・学校のみなさんへ

行政の方々へ

メディアの方々へ

**「長期休み明けブルー」とは**

長期休暇が終わると、通学が再開することをストレスと感じ、多くの児童生徒が抑うつ感や不安感を抱きます。こうした現象を、私たちは「長期休み明けブルー」「連休明けブルー」と呼んでいます。 厚生労働省(元は内閣府)の「自殺対策白書」における、「18歳以下の子どもたちの過去42年間の日別自殺統計」によると、一年で一番自殺の多い日は夏休み明けの「9月1日(131人)」であり、続いて新学期はじめの「4月11日(99人)」、4月8日(95人)、9月2日(94人)、8月31日(92人)となっています。また、ゴールデンウィーク明けも、リスクの高い時期となっています。

[内閣府 平成27年版自殺対策白書 第2節 若年層の自殺をめぐる状況 4.学生・生徒等の自殺をめぐる状況 より転載]

このように、連休明け・長期休み明けは自殺リスクが高まります。そのため、この時期には特に、子どもたちへのストレスケアが重要となります。

**コロナ禍の対応**

日頃からストレス要因を減らし、ストレス発散の手段を増やす必要

メンタルヘルスの問題を改善するには、どのようなストレッサー(ストレス要因)があり、そしてどのようなコーピング・レパートリー(ストレス発散の手段)があるかを確認する必要があります。そして、ストレッサーを減らし、コーピング・レパートリーを増やすことが必要です。

コロナ禍と学校、多くのストレス発散の手段が制約されている

しかしコロナ禍は、マスクや消毒をはじめ、感染不安や経済不安など、ストレッサーを増やす一方で、友人と遊んだりカラオケに行くなど、コーピング・レパートリーを奪ってしまっています。 もともと学校では、学校校則などによって、多くのコーピング・レパートリーが制限されています。スマホやゲームなどの持ち込みが禁止され、服装をアレンジするなどのおしゃれも、授業の合間に甘いものを摂取するなどの息抜きもできません。そこに、コロナ禍で、友人との遊びや会話も制限されることになるため、コーピング・レパートリーの制約が拡大してしまいます。

リモート授業によって教室ストレスが減少し、自由を感じる児童生徒もいますが、家庭ストレスが増大したり、あるいは授業ペースについていけなかったり、友人と遊ぶといったコーピングができなくなってストレスを発散できない子どももいます。

現場に多くの人手、ツール、支援を

そこで、マンガ読書やおしゃれも解禁する、可能な範囲でのレクリエーションや運動を増やすなど、子どもたちの生活様式そのものを、メンタルヘルスに着目した上で改善することが必要となります。チャットツールやメッセンジャーなども活用しつつ、よりカジュアルに相談しやすい体制を作ったり、調査やリモート面談などによって精神的健康状態を把握するなど、新たな工夫が必要でしょう。そのためにも、現場に多くの人手、ツール、支援が必要となっています。

【参考】「コーピング」の詳しい情報・荻上チキ解説Youtube

【参考】「コーピング」の詳しい情報・コーピングのやさしい教科書(伊藤絵美著) (amazonサイト)

【参考】こどもが考えた気持ちを楽にする23のくふう(国立成育医療研究センター制作)

**子どものみなさんへ**

伝えやすい人に気持ちを伝えてみませんか

休み明けに心配ごとや不安はありませんか? はっきりと言えなくてもいい。なんとなく不安なことを、できるところからでいいので、少しでも言いやすいと思える人に、気持ちを伝えてみませんか。

ちかくの人に言いづらい時は「電話やチャット」もあるよ

家族や先生に言いづらかったら「チャイルドライン」(0120−99−7777・午後4時から午後9時まで)などにかけてみるのも手です。気持ちを話すことで、解決のヒントが見つかるかもしれないよ。

【そうだんできるよ】 チャイルドライン(でんわとチャットができるよ) https://childline.or.jp/

メモや日記を書いてみよう

誰にも言えなかったら、まずは自分の気持ち・不安などを「メモ」してみよう。「日記」みたいに書いても、自由に書いてもOK。いざという時に、それがあなたにとって「だいじな証拠(しょうこ)」になるよ。

【つかってみてね】「あしたニコニコメモ」(メモと日記版)

あなたには「助けてもらえる権利(けんり)」がある

どんなに「ひとりぼっち」と感じていても「自分はだめだ」と思っていても、あなたは、息をしたり、ご飯を食べたり、ゆっくり眠ったり、安心して過ごしたりしていいんだよ。そして苦しい時はSOSを出して誰かに助けてもらっていい。これを見ている時点で、あなたはすでに「生きていこうとする一歩」を踏み出していることに気づいてくれると嬉しい。

「上手に休む」「しっかり遊ぶ」

体や心が疲れると、学校に行ったり、習いごとにいくだけでなく、ご飯を食べたり、息をするのだって、しんどくなることがあるんだ。それは誰にでも起こることで、君が弱いからじゃない。そういう時は、しっかり休むことが必要なんだ。それから、しっかり遊ぶこと。自分にとっての「楽しいことリスト」「やりたいことリスト」を作って、「疲れた時のごほうび」を楽しむのも、とても大事なんだ。あまりに勉強の量が多かったり、親のしかりかたがイヤだったら、「つかれるから休みたい」「ここをなおして欲しい」と伝えるのも大事だよ。その時は、このページを見せてみるのもいいよ。

【見てみてね】 子どもが相談できる相談窓口情報

**保護者のみなさんへ**

長期休み明け前後の子どもに注意を

新学期前日や直前、新学期初日など、子どもの顔色や体調の変化など、疲れや緊張、ストレスが溜まっていないか注目してください。特にコロナ禍によって、言葉にできない「不安」や「モヤモヤ」を抱えている傾向も調査でわかってきています。登校開始の前後1週間は特に注目したほうが良い期間です。

初日から無理に学校に通わせなくてもいい

もし、「明日から学校にいくのがしんどい」や「学校に行きたくない」など「登校をしぶる」ような訴えがあったら、危険サインです。初日から無理に学校に通わせるのではなく、子どもの様子をしっかり受けとめることからはじめませんか。

休める場所を確保して、耳を傾けて

本人が 言葉にできないことも多くあります。けれども、無理に聞き出そうとするよりも、まずは寄り添って、できるだけ同じ空間にいるようにして、ゆっくり耳を傾けてみませんか。また、衣食住を基本にして、安心して休める場所を確保してあげましょう。

「PCOP(ピーコップ)」を参考に、対応を考えませんか

「PCOP」は、30分で行える緊急的な認知行動療法です。元はアメリカの兵士向けに作られたものですが、開発者の許可のもと、日本向けにアレンジし直したものです。ストレスに気づき、それに意図的に対処する手段を、一緒に増やしていくこと。「自分たちにはどんなストレス発散手段があるか」「数ヶ月後にどんな楽しいことがあるか」などの確認を、親子で一緒に行ってみてください。

【参考】心理的危機対応プラン「PCOP(ピーコップ)」 https://stopijime.jp/pcop.html

「第三者の相談先」と伝えることも大事

子どもは、なにか不安や悩みを抱えている時、親や先生に言いづらい、という場合もありえます。親としては少し不安かもしれませんが、チャイルドラインなどの電話やカウンセラー・ソーシャルワーカーなど、「第三者」につながっていくことも考えてください。また、家でも学校(職場)でもない、「第三の場所」が子供にあるかどうかも、合わせて考えるのがいいでしょう。

【参考】保護者向け相談窓口情報

**教員・学校のみなさんへ**

新学期に楽しい教室づくりを心がけよう

苦しさを感じている子どもは、前学年や前学期から、人間関係によるストレスを積み重ねていたり引きずっていたりします。一時的に長期休暇で休息できても、新学期が近づく頃や新学期初日を迎えることは、当人にとってストレスフルで、息苦しく、つらい時期である場合があります。

だからこそ、普段よりも楽しいクラスの雰囲気づくりや、授業づくりに心がけてください。学期始まったすぐに、ストレスフルな授業を行ったり、テストを行って負荷をかけるのではなく、まずは心理的な安全の確保に努めてください。宿題を出していない子、硬い表情の子どもがいたら、注意よりも、まず声をかけて、可能な限り話を聞くことが大事です。

訴えがあったら、とにかく耳を傾け寄り添って

子どもがなにかを訴えていたら、子どもが安心できる場所で、寄り添いながら話を聞く時間を確保することが大切です。大人側の価値観を押し付けずに時間をかけて耳を傾けることで、少しずつ奥底にある何かが見えてくる場合があります。また「連絡帳」などの書き込みにも注意しておくことも大事です。

新学期前の様子を保護者と情報交換も

体調が悪いなどの子どもがいたら、新学期前の様子を保護者などと相談することも大事です。周りとの連携を図りながら、子どもを見守っていきましょう。

新学期から3日間は、特に注目して

ただでさえ忙しい教職員のみなさん。だからこそ担任一人で抱え込まずに「いつもとどこか違う!」と思ったら、すぐにその情報を他の先生方や、スクールカウンセラーなど精神保健のプロフェッショナルと共有してください。子どもたちの状況を抱え込まないことが、子どもを救う第一歩となります。

学校の他の教職員と協力して

担任だけではなく、校長や養護教諭、学校司書、カウンセラーなどが、学校内の子どもたちの様子に注目することも大事です。

時に外部との連携も大事

学校内だけではなく、日頃から、学校が信頼できる第三者の電話相談先番号や相談先を子どもたちと情報共有しておくことが大事です。それを新学期初日などに知らせることで、子どもたちの訴えをキャッチするきっかけが増えるかもしれません。できれば相談先情報を、生徒手帳などに貼り付けられるとなおOK。

「いじめ防止法」に基づいた取り組みを

「いじめ防止対策推進法」に基づいた体制づくりができているか、再度チェックしてください。特に学校内で組まれている「いじめ防止のための常設組織」の体制の見直しも大事になってきます。

【参考】いじめ防止対策推進法(文科省ウェブサイト) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1337278.htm

**行政の方々へ**

文科大臣みずから継続した情報発信を

子どもの日別自殺統計が明らかになって5年以上が経ちますが、課題は解決していません。また子どもの自殺予防だけでなく、いじめや不登校、問題校則を含めた学校内ルールや指導のあり方、子どもと向き合う教職員の働き方など、諸課題を解決するための施策が、まだまだ足りていません。

文部科学大臣が先頭に立って、それらの諸課題の現状を把握し、対策を推進させるための環境整備を行ってください。また子どもたちのみならず、教育委員会、各学校や教育に携わる人々などへ向けての、具体的なアクションや情報発信を継続的に行うことを求めます。

長期休み明けに対する具体的な調査分析・対策を

夏休み明けだけではなく4月の新学期の始まりやゴールデンウィーク明け、冬休み明けなど、「長期休み明け」が子どもたちの大きなストレスとなり、また「自殺のリスク」となっていることに対する調査研究の深掘りと整備が急務です。積極的な背景調査や分析・対策のできる、予算措置を含めたさらなる施策強化を求めます。

中・長期的な取り組みを進めてください

短期的な施策だけではなく、中・長期的な取り組みも重要です。学校現場で毎年定例で行われている「学校アンケート」を「生活環境アンケート」などにし、日常の子どものサインを受け止め・対応につなげていくための一元化された方法など、対策の見直しが求められています。

また「いじめ防止対策推進法」などの法律やそれに伴うガイドラインの情報共有、これまでの全国のいじめ対策の情報などを集約・情報発信を促進させ、これ以上、追い詰められる子ども生まないための総合的な対策・支援を進めてください。

【参考】いじめ基本方針・自治体チェックリスト調査報告

**メディアの方々へ**

メディアで情報発信する際の注意事項

2015年の情報発信から、多くのメディアが「長期休み明けブルー」の話題を取り上げています。今後も継続した問題提起・啓発・情報発信を求めたいと思います。この時期だけではない、継続した形での発信も期待しています。

またその際、下記にある「報道ガイドライン」に沿った報道が重要です(詳しくは「いじめに関する報道ガイドライン」をご覧ください)。

最悪の状況から脱出することは可能であるというメッセージを報じること
いじめなどが発生した場合の、具体的な解決手段・解決事例を伝えること
子どもたちがアクセスする可能性を常に配慮し、支援機関などの連絡先を明記すること

【参考】いじめ報道に関するガイドライン

【参考】自殺報道ガイドラインとウェルテル効果:荻上チキ解説

「ウェルテル効果」を減らし「パパゲーノ効果」を広げよう

いじめ報道に関するガイドラインの注意喚起にもあるように、最近のコロナ禍においても「ウェルテル効果」(自殺を誘発させてしまう効果、詳細は上記項目の参考動画リンクへ)に対する問題も指摘されています。今一度、ご自身の報道が、自殺を誘発しているものになっていないか、チェックをお願いします。

また、メディアでの発信は、解決するための具体的な情報を提供することで、子どもたちを希死念慮や不安から救うきっかけとなる場合もあります。ぜひ「パパゲーノ効果」(自殺を抑制する効果、詳しくは下記参考動画リンクへ)を生み出すための情報発信を心がけてください。

【参考】パパゲーノ効果:荻上チキ解説Youtube

相談先を紹介する際には「情報のアップデート」を

2015年のメッセージ配信以降、新聞・テレビ・ウェブメディア・雑誌などの各媒体で「電話などの相談先」の掲載・発信が広がったことは、大きな変化であり、今後の継続した発信を要望します。 とはいえ「繰り返し同じ相談先の電話番号」を紹介するだけで、本当に問題が解決できるのか、他の情報・手段はないのかの検討は必要です。

これまでの相談先は「面談や電話」が主流でした。しかし近年急速に「SNS相談・チャット相談」も広がってきました。また電話やチャット以外にも「つながる先や場所」も存在しています。相談先組織の信頼確認は必要ですが、相談先を紹介する際にはぜひ「情報のアップデート」を行い、いくつものリソースがあることを発信していただくことも望みます。

私たちも、この課題について継続して取り組んでいます

私たち「ストップいじめ!ナビ」は、夏休み明けのこの時期や春・冬休み明けの時期に、つらい気持ちを抱える子どもたちがいることに注目して、このメッセージを発信いたします。ぜひ、広めていただき、ご活用いただければ幸いです。

※このメッセージに関するお問い合わせは、こちらまで。 NPO法人ストップいじめ!ナビ(別サイト)

※この内容についてのメディアのみなさまによる情報発信を歓迎します。担当者が具体的にご説明することも可能ですので、こちらのフォームよりお問い合わせください。

上記の内容を「PDF版」にしました。ご活用ください

【PDF】「長期休み明けブルー」にご用心
子どもたちのストレスケアを!

Illustrated by mari yoshida

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