いじめ報道に関するガイドライン

特定のいじめ事件がひとたび話題になると、その事件について報道が集中しがちです。個々の記者が「決して同じような事件を繰り返させまい」と、報道の責務を果たすべく努めていても、メディア全体としてみると、結果的に過熱報道になってしまうことが少なくありません。

過熱報道は、時として、子どもたちを死に追いやってしまうことすらあります。

そのようなパラドックスを解消するため、私たちはここに、「いじめ報道に関するガイドライン」を提案いたします。

「いじめを防ぐための報道」と「子どもたちの命を守るための報道」を実現するため、各社で報道ガイドラインを策定するためのたたき台として、あるいは視聴者の皆様が、メディア報道のあり方をチェックするための手がかりとして、このガイドラインをご活用いただきたく思います。

様々な立場の方々にご活用いただくことで、行政や教育機関への採点や批判に偏った報道から脱却し、共に問題解決をめざす「いじめ報道」を一緒に創りあげていければと思っています。

●いじめ報道に関する3原則

1:子どもたちへの影響に配慮した報道をすること

メディアは、子どもたちと命綱(相談機関や支援策)とをつなげることができます。しかし同時にメディアは、意図せぬ形で、子どもたちをさらに追い込むこともできてしまいます。その報道が子どもたちに届いた時、どのような影響を具体的に与え得るものか、常に慎重な吟味が必要です。

2:関係者への影響に配慮した報道をすること

メディアは報道を通じて、関連機関に問題の改善を求めることができます。しかし同時にメディアは、関係機関を非難し続けることによって不安や憤りを煽り、結果的に問題解決を先延ばしにすることができてしまいます。取材に基づいて具体的な改善策を提案することは、メディアに与えられた重要な役割だと言えます。

3:社会への影響に配慮した報道をすること

メディアは問題を掘り下げて検証することで、いじめの予防に役立つことができます。しかし同時にメディアは、問題が起きる度に「犯人捜し」を繰り返すことによって、かえって問題を温存し続けることができてしまいます。社会に対してどのような議題(問題の見立て)を設定するのか、その意図と効果が常に問われます。

●やるべきこと:子どもたちと命綱(相談機関や支援策)とをつなげるために

最悪の状況から脱出することは可能であるというメッセージを報じること
いじめが発生した場合の、具体的な解決手段・解決事例を伝えること
子どもたちがアクセスする可能性を常に配慮し、支援機関などの連絡先を明記すること
いじめ研究や行政・民間の取り組みの成果などを広く啓蒙すること
いじめ自殺に関する報道に際しては、WHOの自殺報道ガイドラインに基づき、徹底した慎重さを持つこと

●避けるべきこと:ストレスの連鎖を招かないために

【子どもたちへの影響に配慮するため】

自殺や復讐など、極端な手段を美化しない
被害者救済、いじめ予防の議論よりも加害者叩きの議論に重きを置かない
周囲の子どもたちや家族等に対してメディアスクラムを行わない
いじめが発生した学校に通いつづける他の生徒が、過度なストレスを感じるような報道はしない

【社会への影響に配慮するため】

イメージ映像、BGM、キャプション、見出し等を使い、ネガティブなイメージを強調しない
極端な事例の一般化、統計の誤った利用などを行わない
バッシングを誘うための「晒し行為」としてメディアを使わない

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