特定のいじめ事件がひとたび話題になると、その事件について報道が集中しがちです。個々の記者が「決して同じような事件を繰り返させまい」と、報道の責務を果たすべく努めていても、メディア全体としてみると、結果的に過熱報道になってしまうことが少なくありません。
過熱報道は、時として、子どもたちを死に追いやってしまうことすらあります。
そのようなパラドックスを解消するため、私たちはここに、「いじめ報道に関するガイドライン」を提案いたします。
「いじめを防ぐための報道」と「子どもたちの命を守るための報道」を実現するため、各社で報道ガイドラインを策定するためのたたき台として、あるいは視聴者の皆様が、メディア報道のあり方をチェックするための手がかりとして、このガイドラインをご活用いただきたく思います。
様々な立場の方々にご活用いただくことで、行政や教育機関への採点や批判に偏った報道から脱却し、共に問題解決をめざす「いじめ報道」を一緒に創りあげていければと思っています。
メディアは、子どもたちと命綱(相談機関や支援策)とをつなげることができます。しかし同時にメディアは、意図せぬ形で、子どもたちをさらに追い込むこともできてしまいます。その報道が子どもたちに届いた時、どのような影響を具体的に与え得るものか、常に慎重な吟味が必要です。
2:関係者への影響に配慮した報道をすることメディアは報道を通じて、関連機関に問題の改善を求めることができます。しかし同時にメディアは、関係機関を非難し続けることによって不安や憤りを煽り、結果的に問題解決を先延ばしにすることができてしまいます。取材に基づいて具体的な改善策を提案することは、メディアに与えられた重要な役割だと言えます。
3:社会への影響に配慮した報道をすることメディアは問題を掘り下げて検証することで、いじめの予防に役立つことができます。しかし同時にメディアは、問題が起きる度に「犯人捜し」を繰り返すことによって、かえって問題を温存し続けることができてしまいます。社会に対してどのような議題(問題の見立て)を設定するのか、その意図と効果が常に問われます。