統計データ

いじめは「急増」も「急減」もしていない

いいじめ報道が続くと、あたかも「またいじめがブームになっている」という印象を持つ人が出てきます。でも、いじめは、報道ブームとは関係なく、常に一定の数で存在しています。

いじめの認知(発生)件数の推移

「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について

よく使われる⽂科省の統計は、「学校が認知した数」がカウントされています。これはあくまで認知件数=学校が把握できた数です。

例えば報道などでいじめ問題が注⽬されると、例年以上にアンケートなどに⼒を注ぐ学校が出てくるため、「報道で盛り上がった年は、いじめの認知件数が増える」ということになります。「いじめが増えたから、報道が増えた」というわけではないことに、注意してください。

⽂科省のグラフでは、1994年=平成6年と、2006年=平成18年に、「急増」しているようにみられます。しかしここには2つのマジックがあります。少なくとも、「報道などでいじめ問題が注⽬されたため、各学校が注意深く調査するようになり、認知件数が増えた」ということ、それから「社会問題として取り上げられたことを受け、⽂部科学省がいじめの定義を変えたため、より多めに数えられるようになった」というつの要因が関わっています。

小学校4~6年 いじめ被害 仲間はずれ・無視・陰口(男子)

小学校4~6年 いじめ被害 仲間はずれ・無視・陰口(女子)

国⽴教育政策研究所⽣徒指導研究センター『いじめ追跡調査2004-2006』『いじめ追跡調査2007-2009』

国⽴教育政策研究所は、⼩学校のいじめ被害経験率を毎年調査しています。こちらは⽂科省の調査と⽅法が異なり、⼀⼈ひとりの⽣徒に、「どんな嫌な⽬にあったのか」を尋ねるというアンケート調査です。

例えば「仲間はずれ、無視、陰⼝」の被害経験の推移を⾒てみると、⽂科省の認知件数と異なり、年ごとに⼤きな増減があるわけではないことが分かります。つまり、メディアが取り上げるか否かに左右されて、「今年がいじめが流⾏っている」「今年は落ち着いている」といった解釈をすることは、データを⾒る限り妥当ではないということになります。

認知件数だけを元に、「増えている」「減っている」といった議論をし、さらには「社会が壊れている」「⽇本がおかしくなっている」といった抽象的な議論をするよりも、効果的なアプローチのレパートリーを共有することが何より重要です。

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