統計データ
いじめを止めるには、第三者の介入が重要になります。「いじめを止めて欲しい人」を尋ねると、特に、友達、担任、保護者の名前があがります。
森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より
いじめ研究者の森田洋司は、いじめについて考えるための基礎的な枠組みとして、「いじめの四層構造論」を唱えました。これはつまり、いじめには常に、「いじめっ子」「いじめられっ子」「観衆」(周りではやし立てる者)「傍観者」(見て見ぬふりする者)が関わっているという見方です。
この見方にのっとれば、友達に止めてほしいというのは、要は「傍観者」を減らし、言うなれば「通報者」「仲裁者」を増やしてほしい、ということになります。
森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房、1999)より
注)「高校生等」とは、「高校生」、「各種学校・専修学校、職業訓練校の生徒」の合計である。
厚生労働省『平成21年度 全国家庭児童調査』より
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/72-16b.html
しかし、厚生労働省の調査からは、小学校から中学校にかけて、「仲裁者」(止めろと言って止めようとする)と「通報者」(先生に知らせる)が減少し、「傍観者」(別に何もしない)の割合が増えていくことが分かります。
「傍観者」が増加するということは、頻繁化・長期化しやすい中学時代のいじめを、ますます深刻化することにつながる可能性もあります。
国立教育政策研究所・文部科学省編
『平成17年度教育改革国際シンポジウム「子どもを問題行動に向かわせないために ~いじめに関する追跡調査と国際比較を踏まえて~」 報告書』より
http://www.nier.go.jp/symposium/sympoH18/h17sympo18221j.pdf
こうした傾向は、国際比較においても顕著です。イギリス、オランダとの比較を行った場合、日本以外の2国は、中学生から「傍観者」の数が減少しているのに対し、日本はむしろ増加してしまっていることが分かります。一方で、「仲裁者」の数は減少し続けています。
もちろん、国際比較データは、単純比較することができないので注意も必要です。日本のいじめは、海外のいじめよりも、「暴力的ないじめ」が少なく、「コミュニケーション操作系のいじめ」の割合が多いため、「仲裁者」「傍観者」の意味なども変わるためです。
とはいえ、特に中学校時代において、「仲裁者」「通報者」を増やすことができるのかというのが、課題の一つであるとはいえるでしょう。つまりは、早期段階で介入しやすい環境づくり、いじめを通報しやすい信頼関係を築く学校づくりが求められるということです。
【※みなさまへ】上記の【「傍観者」の出現率の学年別推移】および【「仲裁者」の出現率の学年別推移】のグラフ図に関して、出典元のデータと一部相違点があるとのご指摘をいただきました。現在、データの確認を行っております。みなさまにおかれましては、上記のグラフの引用に関しては、しばらく取り扱いをご注意いただきますよう、何卒どうぞよろしくお願い申し上げます(2019.6.25記)